マイナンバー公金受取口座 台東区も一部利用せず 他自治体は

マイナンバーの公金受取口座に家族名義とみられる口座がおよそ13万件確認された問題で、一部の給付金支給にあたって神奈川県平塚市が口座の利用を取りやめました。
これを受けてNHKが東京都内の自治体を取材した結果、台東区も一部の給付金の支給で口座を利用しない方針を決めたことがわかりました。

マイナンバーの公金受取口座をめぐる問題では、神奈川県平塚市の福祉総務課が「住民の不安感に配慮する」などとして、来月以降予定している非課税世帯などを対象にした物価高騰対策の給付金支給での口座の利用を取りやめました。
こうしたなか、NHKが東京都内のすべての自治体に取材したところ、台東区が今後予定している非課税世帯などを対象にした物価高騰対策の給付金の支給で、マイナンバーの公金受取口座を利用しない方針を決めたことがわかりました。
台東区は理由について、「マイナンバーの公金受取口座をめぐっては不透明な部分がある」などと説明しています。
一方、都内の台東区以外の自治体は、「現時点でマイナンバー口座の利用を停止する予定はない」とか「システム上利用できるようになれば使用する予定」、「システムが整っていない部署もあるため、口座を利用できる状況になっていない」などとしています。

全国の市区町村で最も人口が多い横浜市は、昨年度の物価高騰対策の給付金の支給の際、一部でマイナンバーの公金受取口座を活用しましたが、請求者と口座の名義人の照合作業に時間がかかったことから、今年度の給付については活用しないことを決めました。
さらに、川崎市も、すでに市が把握している別の口座を活用したほうが効率的だとして、今年度の物価高騰対策の給付金でマイナンバーの公金受取口座を利用しない方針です。

個人情報の保護やマイナンバー制度に詳しい中央大学の宮下紘教授は、神奈川県平塚市や東京・台東区の対応について、「個人情報を扱う以上、安全を第一に考えることが大切だ。万が一、自治体が他人の口座に振り込んでしまえば、法的責任も問われかねない。マイナンバー口座への振り込みを一時的に停止し、住民目線で不安感に対応するというのは賢明な判断だと考える」と評価しました。
一方、口座の利用の停止をしない自治体については、「停止しない場合でも、当面の間は書面を併用して、慎重に確認を進めるという作業が必要になるだろう」と指摘しています。
そのうえで、国や自治体に求められることについて、「制度の転換期なので、どうしてもさまざまなエラーは起こってしまう。デジタル化が社会や行政に浸透するには一定の時間がかかる。国民・住民の声を聞き、迅速性や利便性よりも安全性や安心を第一に考え、バランスを図りながら、徐々に推進していくという姿勢が大切だ」と話しています。
また、一人ひとりの住民に求められることとしては、「制度をよく理解し、正確に自分の情報が入力されているかどうか自分の目で確認し、誤りがあれば自治体に訂正を求めるなど、自分の情報は自分で守る、管理していくという発想も大切になってくると思う」と話しています。