ChatGPT使用の職員 8割が効果実感 神奈川 横須賀市

対話型AI「ChatGPT」をことし4月から試験的に導入している神奈川県横須賀市は、使ってみた職員のうちおよそ8割が「仕事の効率が上がると感じた」という調査結果を公表しました。

横須賀市は4月から試験的にChatGPTを導入していて、1か月余りの使用実績や職員のアンケートをまとめた調査結果を5日発表しました。
まず、使用実績です。
1か月余りで職員からChatGPTに投げかけられた質問や命令はおよそ2万6000回でした。
職員アンケートでは使用頻度や何に使ったか、使ってみた感想などを聞いています。
回答した400人余りのうち、5.8%がほぼ毎日、55.7%がときどき、18.9%が1回だけ利用したと答えました。
使っていないと答えたのは19.6%でした。
使ったことがある職員のうち、およそ3割は文書の作成や要約に、4分の1が企画などのアイデア出しに利用したと答えました。
そして、およそ8割の職員は「仕事の効率が上がると思う」と回答しました。
これらの結果から、市はChatGPTを本格的に導入した場合、文書の作成にかかる時間を年間2万2700時間短縮できる可能性があるとしています。
一方、ChatGPTは最新の情報を常に学習しているわけではなく、検索には向きませんが、およそ3割の職員が検索に利用したと答えました。
回答が不適切だったという意見も多く、市は専門家の助言を受けながら、ChatGPTを本格的に導入することにしています。
上地克明市長は「少子高齢化により行政の業務が多様化するなかで事務作業を効率化することで人にしかできない福祉などに労力を注いでいきたい」と話しています。
ChatGPTは、神奈川県や相模原市も導入を進めています。

横須賀市では、職員が試行錯誤しながらChatGPTを業務に利用しています。
このうち消防局予防課の佐々木瞭太朗さんは、ChatGPTをすぐに自分の業務に取り入れました。
入庁8年目の佐々木さんは、これまで消防署で消火や救助活動を担ってきましたが、去年4月に予防課の査察係に異動しました。
重要な仕事の一つが国からの通知を建物の管理者に伝えることです。
法律用語や行政機関特有の言い回しが多い通知を、一般の人でも分かりやすい文章にする必要があり、表現に悩んで、時間がかかることがありました。
佐々木さんはこうした文章を作るためにChatGPTを使っています。
取材した日は個室型の喫煙スペースなどに火災報知器やスプリンクラーを設置する条件が変わったことを、建物の管理者に伝えるメールの文案を作りました。
ChatGPTから提案された文章は分かりやすい表現になっていて、佐々木さんが内容を確認して修正する必要はあるものの、一から自分で考えて作成するより大幅な時間短縮になったということです。
佐々木さんは「予防課に来て日が浅く文章を作ることにはまだ慣れていないので、ChatGPTを利用することでかなり時間の削減につながっていると感じています。私たち消防職員がChatGPTを使い時間の削減を図ることができれば、労力や時間を市民のために使えると思います」と話していました。
一方、ChatGPTが会議でアイデアを出しているケースもあります。
人事課で10年目の職員に対する研修のプログラムを考える会議では、まずChatGPTに10年目職員に必要な能力を10個あげてもらいました。
ChatGPTは、リーダーシップや問題解決の能力、ビジネスコミュニケーションの能力などが必要だと提案してきたということです。
また、「プロジェクトマネジメント能力」が必要だという提案もありました。
これに対して職員が具体策を求めると、ChatGPTは、「チームビルディングを目的としたアウトドア活動研修」とこたえたということです。
出席した職員は斬新で面白い発想だとか、新型コロナもあり庁舎内での研修ばかり考えていた、検討の余地があるなどと受け止めていました。
会議に参加した人事課の根本怜名さんは「いろんな視点の意見が出てくるので強力なアイデアマンが1人、チームに増えたという感覚です。企画の素案を考える時は、『とりあえずChatGPTに聞いてみよう』ということになっていくと思います」と話していました。

行政のデジタル化に詳しい武蔵大学の庄司昌彦教授は「横須賀市は人口減少や職員の人手不足といった将来の課題に立ち向かうデジタル技術の一つとしてChatGPTを導入している。まだ初歩的で大きな成果が出ているとは言えないが、地に足をつけて使い続けていけばAIと良い関係を築けると思う」と話しています。
また、「ChatGPTなどの生成AIは自治体の業務の効率化に大きなインパクトを与える一方で、必要性の低い手続きや会議自体を見直さないまま導入しても無駄な業務が効率化するだけだ。業務の見直しを進めらながら効果的に生成AIを導入することが重要だ」と指摘しています。
そのうえで、「ChatGPTだけであらゆる問題が解決されるわけではないが、横須賀市のように将来の課題を見据えて活用できる手段を積極的に探っていく自治体は問題を乗り越えていけるだろう。一方で、こうした技術がリスクがあるから禁止すると捉えて研究をしない自治体はゆくゆくは人手が足りず仕事が回らなくなり、住民サービスが低下するのではないか」と話しています。