はしか感染者 先週時点で7人 すでに去年1年間の人数上回る

感染力が非常に強いはしかの感染者数は、国立感染症研究所のまとめで、先週の時点でことしは7人で、去年やおととしの1年間の感染者数を上回りました。
発症すると重症化することもあるとして、専門家は抗体検査やワクチン接種を呼びかけています。

はしかは、発熱やせき、発疹が出るウイルス性の感染症で、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、肺炎や脳炎を引き起こして重症化したり、死亡したりする場合もあります。
国立感染症研究所が23日発表した速報値によりますと、ことしの感染者数は今月14日の時点で7人となりました。
都道府県別では、東京都で3人、茨城県、神奈川県、新潟県、それに大阪府でそれぞれ1人となっていて、このうち東京都の2人と新潟県の1人は今月14日までの1週間に確認されました。
はしかの感染者数は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、海外との往来が減った影響などから減少し、去年とおととしは1年間で6人でしたが、ことしはこれをすでに上回っています。
はしかはアジアなどで流行していて、国内でも先月インドから帰国した男性の感染が確認され、同じ新幹線に乗っていた2人の感染も確認されるなど、今後、さらに拡大するおそれがあります。
各地の自治体は、感染した人が利用していた公共交通機関を公表するなどして注意を呼びかけています。
はしかに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「ここ数年、はしかの感染者数は少なかったが、流行の兆しが見えてきた。はしかの恐ろしさを再認識し、免疫のない人はワクチンで予防してほしい」と話し、抗体検査やワクチン接種を呼びかけています。

はしかはウイルス性の感染症で、患者がせきやくしゃみをすることで放出された粒子にウイルスが含まれていて、それを吸い込むことで感染します。
空気感染のほか、飛まつや接触を通じて広がることもあり、感染力は極めて高く、免疫がない場合、感染者と同じ室内にいただけでほぼ確実に感染するとされています。
まわりの人に免疫がなく対策がとられない場合、患者1人から何人に感染を広げるかを示す「基本再生産数」は「12から18」とされ、「2から3」ほどとされてきた新型コロナウイルスなどより感染力は格段に高いとされています。
先月には新幹線で同じ車両に乗っていた人が感染したほか、2019年には、大阪の商業施設でアルバイト店員の感染が確認され売り場を訪れていた買い物客らに感染が広がりました。
国立感染症研究所ではしか対策に取り組んできた、神奈川県衛生研究所の多屋馨子所長は「同じ場所に数分間、短い時間一緒にいるだけで感染してしまう可能性がある。それほど感染力が強い病気だ」と話しています。
はしかに感染したときに出る症状は発熱やせき、発疹などで、はしかに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授によりますと熱は2日ほどでいったん下がったあと再び上がるのが特徴で、40度近くまで上がり、発熱は1週間ほど続くということです。
また、発疹は症状が出始めてから数日たたないと出ないため、最初のうちは、はしかと判断しにくいこともあるということです。
さらに、感染による合併症として肺炎や脳炎が引き起こされて重症化することもあり、特に脳炎についてはおよそ1000人に1人の割合で起き、なかには亡くなるケースもあります。
アメリカのCDC=疾病対策センターによりますと、はしかに感染した子ども1000人中、1人から3人は呼吸器や神経系の合併症で亡くなるとしています。
はしかの特効薬はなく、症状に応じた治療をするしかないため、専門家はワクチンなどで感染を防ぐことが重要だとしています。
2007年には、日本国内でワクチンを接種していない0歳から1歳の子どものほか、1回しか接種していない10代や20代を中心に感染が広がりました。
また、中高年でも感染を経験しておらず、ワクチンを接種していないか、1回しか接種していない人では、感染した場合は命にかかわることもあるとして、専門家は注意を呼びかけています。
中山特任教授は「はしかの最も重篤な合併症は脳炎で、熱が出て発疹も出ているときにトロトロとして呼びかけても反応しないような状況が続くのが初期症状だ。はしかは昔から『命取りの病気』と言われる。特効薬もなく、侮ってはいけない病気だと認識してほしい」と話しています。
そして、感染が疑われる場合は直接医療機関を訪れると、感染を広げてしまうおそれがあるため、あらかじめ連絡したうえで受診してほしいと呼びかけています。