東京五輪汚職事件で初めての判決 AOKI前会長らに有罪判決

東京オリンピック・パラリンピックのスポンサー契約などをめぐる汚職事件で、大会組織委員会の元理事に賄賂を渡した罪に問われた紳士服大手「AOKIホールディングス」の前会長ら元幹部3人に、東京地方裁判所は執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。
一連の汚職事件ではあわせて15人が起訴され、判決が言い渡されたのは初めてです。
AOKIホールディングス前会長の青木拡憲被告(84)と前会長の弟で副会長だった青木寶久被告(77)、それに、元専務執行役員の上田雄久被告(41)の3人は、東京大会のスポンサー契約などに関して便宜を図ってもらう目的で、組織委員会の元理事、高橋治之被告(79)に2800万円の賄賂を渡した贈賄の罪に問われました。
21日の判決で、東京地方裁判所の安永健次裁判長は「組織委員会の森喜朗元会長を交えた会食の場や担当者とのやり取りなどで高橋元理事の影響力の強さを認識し、大会の開催で自社が大きな利益をあげるため犯行に及んだ」と指摘しました。
そのうえで、「元理事の影響力を利用し自社の利益を追求しようとする前会長らと、その見返りに利益を得ようとする元理事、それぞれの思惑が一致して敢行された犯行で、世界的に注目された大会の公正な運営に対する社会の信頼が害された」として、青木前会長に懲役2年6か月、執行猶予4年、寶久前副会長に懲役1年6か月、執行猶予3年、上田元専務執行役員に懲役1年、執行猶予3年を言い渡しました。
東京大会をめぐっては、受託収賄の罪に問われている高橋元理事や業界大手の5つの企業の創業者や経営トップらあわせて15人が起訴され、判決が言い渡されたのは初めてです。
判決を受け、AOKIホールディングスは「本件を厳粛に受け止めており、お客様からの信頼を回復すべく、全社一丸となって再発防止等に取り組んでいく」とコメントしています。
【東京五輪汚職事件 5ルートの裁判状況】
世界的なスポーツの祭典を舞台に5つのルートであわせて15人が起訴された一連の五輪汚職事件。
去年12月に開かれたAOKIホールディングスの青木前会長らの初公判を振り出しに、広告大手「ADKホールディングス」、出版大手「KADOKAWA」、大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロー」、広告会社「大広」の5つのルートすべてで裁判が始まっています。
裁判が始まった11人のうち無罪を主張したのは「大広」の元執行役員のみで、そのほかの4つの企業の元幹部などはいずれも起訴された内容を認めました。
これまでの裁判では、大手広告会社の電通で、長年にわたりスポーツマーケティングの第一人者とされ、組織委員会の理事としてスポンサー集めなどを任されていた高橋元理事の影響力を頼ってそれぞれの企業が繰り返しアプローチしていた状況が浮き彫りになりました。
AOKIホールディングスの裁判では、高橋元理事らとの会食の際にスポンサーの話をもちかけられた青木前会長が「AOKIのブランド力を高められるならと考え、その場で『やりましょう』と伝えた」などと、具体的なやりとりが明らかにされ、21日の判決は「自社の利益を追求しようとする前会長らと、その見返りに利益を得ようとする元理事の思惑が一致した」と指摘しました。
また、KADOKAWAの元担当室長の裁判では、高橋元理事側への支払いが贈賄罪などにあたるリスクがあると法務部が指摘していたのに、当時の角川歴彦会長が『ちゃんとうまくやれよ』と言っていたことが検察の冒頭陳述で示されました。
さらに、裁判では、大会組織委員会の森喜朗元会長や竹田恒和元副会長の調書を検察が読み上げ、森元会長が大会スポンサーの選定に大きな影響力を持っていたことを明らかにしました。
一方、賄賂を受け取ったとされる組織委員会の高橋元理事は、去年12月に東京拘置所から保釈されましたが、初公判の日程は決まっていません。
不正を否定しているということです。
また、起訴された当時、「汚職に関与したことなど一切ありません」とするコメントを発表した角川元会長はいまも勾留されていて、初公判の日程は決まっていません。