角膜濁り視力が低下の患者にiPS細胞移植 世界初

目の表面にある角膜が濁り、視力が低下する病気の患者にiPS細胞から作った目の細胞を移植し、視力の回復を目指す世界初の手術を実施したと藤田医科大学などのグループが明らかにしました。
藤田医科大学の榛村重人教授と慶応大学のグループは、角膜の内側にある特定の細胞が減ることで角膜が白く濁り、視力が低下する「水ほう性角膜症」という目の病気の患者に、他人のiPS細胞から作った目の細胞を移植して視力の回復を目指す臨床研究を進めています。
グループによりますと、去年10月、東京の慶応大学病院で世界で初めてとなる1例目の手術を行い、70代の患者の角膜の内側におよそ80万個の細胞が含まれた溶液を注射する方法で移植したということです。
手術から3か月の時点で拒絶反応や出血などの合併症は起きておらず、視力なども改善傾向を示しているということで、引き続き、安全性や有効性を確認するとしています。
現在、「水ほう性角膜症」の根本的な治療は角膜移植しかありませんが、研究グループによりますと、およそ1万人が移植を待っているのに対し、移植を受けられるのは年間でおよそ2000人にとどまっているということです。
榛村教授は「研究開始から10年で移植がようやく実現し、ほっとしている。角膜のドナーはどの国も不足しているので、世界中の患者を救えるような治療を目指したい」と話しています。