東京女子医大「受託研究費」約2億5000万円申告漏れ指摘

東京女子医科大学が、複数の製薬会社から提供され「受託研究費」として税務申告していなかった資金について、東京国税局が研究の成果が公表されていないことなどを理由に課税対象に当たると判断しておよそ2億5000万円の申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含めおよそ5500万円を追徴課税していたことが関係者への取材でわかりました。
追徴課税を受けたのは東京・新宿区にある学校法人・東京女子医科大学です。
関係者によりますと、大学側は、複数の製薬会社から薬の効能を調べる臨床試験を行うために受け取っていた資金などについて課税対象にならない「受託研究費」として処理し、税務申告していなかったということです。
私立大学が受け取る「受託研究費」が非課税措置の対象となるのは大学が研究成果を公表するか、研究成果の一部が大学に帰属している場合に限られますが、東京国税局は税務調査の結果、いずれもこれらの条件を満たしておらず、大学側が製薬会社から受け取った資金は業務の請け負い収入に当たると判断したとみられます。
このため東京国税局は去年3月までの5年間におよそ2億5000万円の申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含めておよそ5500万円を追徴課税したということです。
「受託研究費」の非課税措置は教育研究活動と密接に関連し、公益性があるとして例外的に認められていて、私立大学への財政支出の減少などを背景に非課税となる要件が大幅に緩和されてきた経緯があります。
NHKの取材に対し東京女子医科大学の代理人の弁護士は「国税局の指摘に基づき修正申告を行い、追加の納税を完了しております。当局との見解の相違によるところもありましたが真摯に受け止め、再発防止に努めてまいります」などとコメントしています。
大学が製薬会社などから新薬開発などのために受け取る「受託研究費」について、多くの私立大学は1990年代後半まで研究費は医学研究に使われるものだとして税務申告をしてきませんでした。
一方、国税当局は「受託研究費」は大学が製薬会社などから仕事を請け負って得た収入で、使いみちもはっきりしないケースがみられるとして税務調査で申告漏れが明らかになった私立大学には課税処分を行ってきました。
1996年に行った税務調査では全国11の私立大学に対し、あわせて18億円に上る申告漏れを指摘し、中には「受託研究費」が医学部関係者の飲食費や個人的なタクシー代などに流用されていたケースもあったということです。
これに対して全国の私立大学で作る団体は、研究費を個人ではなく大学の事務局が一括して受け取るなどの改善が図られたとしたうえで、受託研究は公益性が高く、同じ研究をしても国立大学は法人税が非課税になるので不公平だなどと主張し、1998年には「受託研究費」のうち看護師の人件費など一部が非課税となりました。
2002年には非課税となる基準が新たに設けられましたが、団体側はその後も「私立大学への財政支出は減少していて、国際競争力を強化するためには多元的な収入源が必要だ」などと要望しました。
そして「受託研究費」が非課税となる要件は2017年4月に、大幅に緩和され、研究成果を公表するか研究成果の一部が大学に帰属するという要件のいずれかを満たせば、非課税となりました。
税務行政に詳しい青山学院大学大学院の小林裕明教授は「『受託研究費』の非課税措置は教育研究活動と密接に関連し、公益性があるとして例外的に認められているが、研究の成果物が100%企業のものになるなら公益目的という理屈は成り立たなくなる。大学側は改めて要件を把握し、順守することが求められている」と指摘しています。