一部の抗がん剤 心臓への強い副作用対応で初のガイドライン

一部の抗がん剤 心臓への強い副作用対応で初のガイドライン

2人に1人ががんになるとされますが、乳がんなどの治療で標準的に使われる一部の抗がん剤では、治療効果がある一方で、心臓への強い副作用が出て、心不全などを発症することがあります。
日本臨床腫瘍学会などが、心臓への副作用に関するガイドラインを初めてまとめたことが分かりました。

乳がんや血液のがんの治療で標準的に使われる「アントラサイクリン」系と呼ばれる抗がん剤には高い治療効果がある一方で、患者のおよそ10%では心臓の機能に障害が起き、一部で重い心筋症を発症する強い副作用が出るとされています。
こうした副作用に苦しむ患者が増えているとして、日本臨床腫瘍学会や日本腫瘍循環器学会などが、心臓に対する副作用への対応などについて、初めてとなるガイドラインをまとめたことが分かりました。
ガイドラインでは、「アントラサイクリン系」の抗がん剤や「抗HER2薬」と呼ばれる薬を治療に使う際には、心不全を予防するため、超音波検査や血液検査などで、心臓の状態を評価することを提案しています。
また、がん治療に伴って心臓や血管の病気が起きるリスクが中等度以上と評価される患者については、循環器の専門医も診察するよう推奨しています。
一方で、副作用が出た際の治療の中止や再開の目安、治療後に経過観察を行う期間の目安などについては、今後対応を検討するとしています。
ガイドライン作成委員会の委員長で、東京慈恵会医科大学の矢野真吾教授は「心臓の合併症に注意しながら、適切にがん治療を続けることや、がんの治療が終わった患者さんの生活の質の維持に役立ててほしい」と話しています。
ガイドラインは来月、学会のホームページなどで公開されます。