小中学生対象 体力や運動能力調査 全国平均が小中とも最低に
全国の小学5年生と中学2年生を対象に、体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、50メートル走やボール投げなど8項目の合計の全国平均が、小中学校ともに調査を始めてから最も低くなりました。
スポーツ庁は、運動時間が減少する一方でスマートフォンなどを見る時間が増えたことに加え、新型コロナの感染拡大の影響も考えられると分析しています。
国は平成20年度から、全国の小学5年生と中学2年生を対象に50メートル走やボール投げ、反復横とびなど8つの項目で体力や運動能力を調べていて、今年度はおよそ190万人が対象になりました。
このなかで8項目の成績を数値化した「体力合計点」の全国平均は、小中学生の男女ともに調査を始めてから最も低くなりました。
具体的には、小学生の50メートル走は、男子が9秒53で昨年度より0秒08、女子は9秒70で昨年度より0秒06、それぞれ遅くなりました。
また、中学生の持久走は、男子の1500メートル走が6分50秒9、女子の1000メートル走が5分4秒となり、男子は3秒7、女子は5秒7、それぞれ昨年度より遅くなったということです。
生活習慣についてのアンケートでは、学習以外でテレビやスマートフォンなどを見る時間が、一日4時間以上に上る子どもの割合が、小中学生ともに昨年度より増えていて、なかでも中学生では男子が28.3%、女子が26.1%と、いずれも3ポイント前後増加しています。
また、体育の授業を除く運動時間が1週間で420分以上の子どもの割合は、小中学生ともに昨年度より増えましたが、新型コロナの感染が拡大する前の令和元年度と比べると低い水準のままとなっています。
スポーツ庁は、運動時間が減少する一方で、スマートフォンなどを見る時間の増加といった生活習慣の変化があることに加え新型コロナの感染拡大でマスクを着用した激しい運動を自粛したことなども影響しているのではないかと分析しています。
子どもの体力低下の一因と考えられているのが、外遊びの時間の減少です。
東京都はことし10月、小学生以下の子どもがいる保護者500人を対象に、新型コロナウイルスの感染拡大の前後で外遊びの機会がどう変化したかを聞くアンケート調査を行いました。
その結果、「減っている」が17.8%、「どちらかといえば減っている」が25.8%であわせて43.6%に上りました。
一方で、「変わらない」は38.2%、「どちらかといえば増えている」が8.2%、「増えている」が10%でした。
また、スマートフォンなどのデジタルデバイスの利用時間の変化については「増えている」と「どちらかといえば増えている」と回答した人があわせて58%に上りました。
この結果を受けて東京都は、さまざまな種類の外遊びをタレントのなかやまきんに君が紹介する「そとあそびずかん」という動画の発信を始め、子どもどうしや家族で体を動かす機会を増やそうという取り組みを進めています。
子どもたちの体力向上につなげようと、野球のグラウンドを開放して小学生に鬼ごっこやボール投げなどの外遊びを楽しんでもらおうという取り組みも始まっています。
早稲田大学の野球部のOB会は、子どもたちが外で自由に遊ぶ場所が少なくなり体力が低下していることに着目し、西東京市にある野球部のグラウンドを小学生に開放しています。
今月11日に行われたグラウンドの開放には小学生およそ160人が集まり、キャッチボールをしたり、サッカーやトランポリンをしたりして自由に体を動かしていました。
小学2年生の子どもと参加した東京・練馬区の40代の母親は「昔に比べて、子どもが外に出る時間はすごく減っていると思う。ボール遊びができる公園も少ないのでこういうイベントがたくさんあると、親としてはうれしい」と話していました。
また、この日は鬼ごっこの普及を進める団体とOB会が協力して考案した、野球のベースを使った「ダイヤ鬼」の体験も行われました。
「ダイヤ鬼」はベースの間にいる鬼に捕まらないように一塁からベースランニングの要領でホームを目指す鬼ごっこで、子どもたちは参加した大学4年生の野球部員たちと一緒に、グラウンドを元気に駆け回っていました。
参加した小学5年生の女の子は「今までやったことのない鬼ごっこや野球ができて楽しかったです」と話していました。
早稲田大学からプロ野球・西武にドラフト1位で入団する蛭間拓哉選手は「外で遊ぶ楽しさを一緒に体験できたのでよかった。鬼ごっこなどは体力を使うと思うので、積極的に外で遊んでほしい」と話していました。
早稲田大学野球部のOB会の大渕隆さんは「運動の機会が減っているなかで、いきなり競技から入るのではなく、遊びから入っていくことが重要だと思っている。今後も大学の許可を得ながら、自由に遊べる場所の提供を継続したい」と話していました。