海外での小児の心臓移植手術 円安が直撃し費用高騰 寄付募る
重い心不全で心臓移植が必要な1歳の女の子がアメリカで移植手術を受ける資金を集めようと、支援者や両親が募金活動を始めました。
円安などの影響で費用が高くなり5億円以上が必要だということで「家族ではどうすることもできない金額でなんとか協力をお願いしたい」と訴えました。
東京・豊島区の佐藤昭一郎さんの次女、葵ちゃん(1)は生後まもなく心臓の壁に穴が開いているのが見つかり、2回の手術のあと、重い心不全の状態になりました。
埼玉医科大学国際医療センターに入院していますが、国内では早期の移植が望めないとして両親はアメリカのコロンビア大学病院での移植を目指すことを決めたということで、14日、支援者でつくる「あおちゃんを救う会」と両親が厚生労働省で記者会見して募金を呼びかけました。
国内では10歳未満からの臓器提供は去年までの10年間で31件行われていますが、新型コロナの影響でおととし以降は減少し、ことし9月末現在で心臓移植を待っている10歳未満の患者は43人に上ります。
海外での心臓移植は現地の医療費が高額なうえ、補助人工心臓をつけた状態での渡航でチャーター機が必要なため、去年の段階でも3億5000万円程度かかるとされていましたが、ことしに入っての急激な円安などで為替レートによるもののおよそ5億3000万円が必要と見込まれるということです。
父親の佐藤昭一郎さんは「とんでもない金額が必要になり家族だけではどうすることもできなくなってしまいました。なんとか娘の命を救いたい。どうかご協力をお願いできればと思います」と述べ、会見のあと、支援者とともに街頭に立って募金を呼びかけていました。
子どもの臓器移植は、2010年に施行された改正臓器移植法で家族の意思があれば脳死と判定された子どもからの臓器提供が可能になって以降、国内でも行われてきましたが、ここ数年は新型コロナウイルスの感染拡大で臓器提供について医師などが説明する救急医療の現場がひっ迫するなどした影響もあり、件数が減少していました。
日本臓器移植ネットワークによりますと、これまでに国内で行われた臓器提供は6歳未満では24件、6歳から18歳は39件となっています。
臓器提供は徐々に増え、6歳未満では2019年には6件でしたが、おととしからの新型コロナの影響で減少し、おととしは3件、去年は3件、そしてことしも3件となっています。
また、6歳から18歳でも2019年には12件だったのが、おととしは4件、去年は1件、ことしは4件となっています。
これに対して臓器移植を待つ人の数は、心臓の場合ことし9月末時点で10歳未満が43人、10代が59人いて、待機患者に比べて臓器提供が少ない状況が続いています。
国立循環器病研究センター病院などで子どもの臓器移植に携わってきた千里金蘭大学の福嶌教偉学長は「海外に渡航しての移植は複数の補助人工心臓の装置やチャーター機などを用意する必要があるうえ、現地で移植を待つ間だけでも1か月に数千万円の費用がかかるなど非常に負担が大きい。子どもの臓器提供は国内でもコロナが拡大する前の年までは増え、そのまま増えれば渡航せずに移植医療が成立するのではないかと考えられるほどだった。お子さんや家族の負担を考えると、国内で移植ができるようになるのが最も望ましく、救急現場でコロナなどで大変ななかでも医療者と患者さんの家族との間でコミュニケーションがとれ、臓器提供という選択肢について説明する機会を持てるようにすることが必要だ」と話しています。
佐藤葵ちゃん(1)は、生後まもなく心室の壁に穴が開いているのが見つかり、2回心臓の穴をふさぐ手術を行いました。
手術は成功しましたが、重い心不全で心臓から血液を十分に送ることができない状態になってきたため、ことし6月、補助人工心臓の装置を取り付けました。
小さい子どもの場合、体の外にある装置で血液の循環を補助する体外式の補助人工心臓しかなく、装置の不具合や血栓ができるのに備えるため、医療スタッフが24時間近くにいることが必要で葵ちゃんは病院から外に出ることができません。
いまは母親の清香さんが病院に寝泊まりして付き添っているということです。
補助人工心臓を長期にわたって装着していると脳梗塞や脳出血などが起きるリスクが高くなり、根本的な治療のためには心臓移植が必要になるということです。
清香さんは「娘は病院から出たことがなくても毎日新しいことを学びながら頑張って生きています。こんな形でお願いするのはわがままだし葛藤がありましたが、ただ娘を助けたいという気持ちです。どうか助けて頂けないかと思います」と話していました。