ライブハウスの新ガイドライン 業界団体が順守徹底呼びかけ

新型コロナの感染拡大で収容人数が制限されていたライブハウスについて、観客が声を出す時間を限定するなどの条件で100%の収容率を認めるガイドラインをまとめた業界団体の幹部は「業界やファンにとって大きな1歩になるが、しっかり守ってもらい安心して楽しめるようにしていきたい」として全国のライブハウスなどに対しガイドラインの順守の徹底を呼びかけています。

ライブハウスをめぐっては、いわゆる「3密」の条件がそろいやすい場所として指摘され、業界団体は国や専門家の協力を得て、収容人数を制限したり、マスク着用で声を出さないよう観客に求めたりするガイドラインを設けて、ライブを行ってきました。
そして、今月14日、感染者が一時期に比べて減っていることなどを踏まえ、マスクの着用や換気などの感染対策を徹底したうえで観客の声が通常の会話の音量を上回らず、声を出す時間の限度を1曲あたりの25%程度とすることを条件に100%の収容率を認めるガイドラインを新たにまとめました。
ガイドラインをとりまとめた日本音楽会場協会の阿部健太郎会長は「100%の収容率で声を出せるのは、コロナで影響を受けてきた業界や声出しを我慢してきたファンにとって大きな1歩になる」と話していました。
一方、SNS上では、今回の条件が「現実的ではない」などと疑問の声も上がっています。
これについては、「困惑や解釈の違いが生じるかもしれないが、感染を広げないためにいろいろな議論が行われることが大切だ。われわれとしては、ガイドラインを守ってもらい皆が安心して楽しめるようにしていきたい」として全国のライブハウスなどに対し、ガイドラインの順守の徹底を呼びかけています。

新たなガイドラインで示されたライブハウスでの声出しルールは現場でどのように受け止められているのか。
16日、試験的に新たなルールが運用された東京・千代田区のライブハウスでのアイドルの合同ライブイベントを取材しました。
このイベントは収容率が50%以下だったため、これまでのガイドラインのもと、観客はマスク着用のうえで音量も時間も制限なしで声を出すことはできますが、今回、1曲のみ、収容率100%の条件となる通常の会話を上回らない音量で1曲あたりの25%程度を限度とする時間の声出しが試されました。
曲の前にはメンバーのひとりが、ファンにガイドラインの内容を説明したうえで協力を呼びかけました。
アイドルの曲は、ファンが「コール」と呼ばれる合いの手の声をところどころ入れるのが魅力の1つとされていて、今回はアイドルが「全開」と呼びかけるとファンが「はじけろ」とコールすることになっています。
ファンはガイドラインに従って通常の会話程度の音量で「はじけろ」とコールし、手に持ったコンサートライトを振り上げて、高ぶる気持ちを表現していました。
また、4分ほどのこの曲ではファンが声を出せるのは1分程度となり、アイドル側が代わりにファンのコール部分の一部について声を出し、盛り上げる工夫をしていました。
記者がファンの声出しの時間を計測したところ、30秒程度に抑えられていました。
訪れたファンは声を出せることにうれしさを感じる人がほとんどで、「ルールを守ることがメンバーや会場のためでもあるので今は我慢して、思いっきりコールできる日が来るのを楽しみにしたい」と協力する姿勢を見せていました。
新たな声出しのルールのもと曲を歌ったアイドルグループ「仮面女子」のメンバーは会話程度の音量でも声援がはっきり聞こえていたとしたうえで、「声が小さくても声援があるのはうれしいです。私たちアイドルとしては、決められたルールの中でファンに最大限楽しんでもらえるパフォーマンスを新たに考えたいです」と話していました。
また、イベントの責任者は「観客が声を出せたこともあり、ここ半年ぐらいのなかでも雰囲気のよいライブだったので今後が楽しみだ。しかし、ルールを逸脱する観客もいるかもしれないので、どのように注意すべきかなど課題はある」と話していました。