地価調査 「東京圏」は住宅地・商業地とも上昇が顕著に

全国の土地の価格を調べた「都道府県地価調査」が公表され、都心部と周辺地域の「東京圏」の地価の平均は、住宅地は去年より1.2%上昇し2年連続でプラスとなりました。
商業地は上昇率が2%と去年よりもプラス幅は大きく拡大し、新型コロナの影響で落ち込んだ土地の需要は回復傾向となっています。

「都道府県地価調査」は、毎年7月1日時点の全国の土地の価格を都道府県が調べるもので国土交通省はことし対象となった2万1400あまりの地点の結果をとりまとめ、20日公表しました。
それによりますと、東京を中心に神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県の一部を含む「東京圏」では住宅地の平均は去年より1.2%上昇しました。
上昇は2年連続で、プラス幅は去年より1.1ポイント拡大しました。
利便性が高い都心部で堅調な需要が続いていることに加えて、郊外でも都心にアクセスのよい地域を中心に、住宅のニーズが高まっています。
また店舗やオフィス向けの商業地は去年より2.0%上昇し10年連続のプラスとなりました。
新型コロナの影響を大きく受けた去年は0.1%上昇でプラス幅は大きく拡大しました。
国内の旅行需要が増えて観光地や繁華街で地価の回復が目立つ一方で、オフィス需要が多い都心部をみると中央区で去年から横ばい、千代田区で0.3%の伸びにとどまっています。
リモートワークの定着などでオフィスの縮小などの動きがみられたほか、大規模なオフィスビルの完成が相次いで予定され、オフィスの供給が増えると見込まれていることも影響したとみられます。

東京圏の住宅地の価格が上昇している背景には、都心部の利便性の高い土地のニーズが高まっていることがあります。
東京・千代田区に建設中の地上17階建ての高級分譲マンションは、102戸の販売戸数に対して販売開始前から2700件の問い合わせが入りました。
今月17日に、40戸が1部屋あたり1億4100万円から11億5800万円で売り出されると、19日までの3日間で68件の購入申し込みがあったということです。
販売している不動産会社によりますと、こうした利便性の高い都心の高額物件はいわゆる「パワーカップル」と呼ばれる共働きの夫婦などから人気で、居住用としてだけでなく資産として購入する人も多いということです。
三菱地所レジデンスの岡橋志郎執行役員は「都心の物件は非常に好調に推移していて、市場全体で新築・中古ともに物件の供給が需要に追いついていない。家にいる時間が長くなったことや働き方の変化もあって在宅時間が長くなり、家の面積や快適性を家庭内で見直す機会が増えているのではないか」と話していました。

都心部で住宅地の地価が上昇するなか、通勤の利便性が高い郊外などでも地価上昇の動きが本格的に広がっています。
このうち東京を中心に神奈川、埼玉、千葉、茨城の4県の一部を含む「東京圏」の住宅地の、上昇率の上位3つの地点はいずれも茨城県つくばみらい市となっていて、3地点の去年と比べたプラス幅は10%から10.8%といずれも大幅な上昇となりました。
市内の100区画ほどある住宅分譲地では、去年の販売開始以降、ほぼ1年で8割以上で契約が成立しています。
市内中心部を走るつくばエクスプレスの「みらい平」駅から都内の秋葉原駅までは40分程度というアクセスの良さや、都心部の物件に比べて敷地や間取りに余裕があることなどから特に子育て世代に人気が高いということです。
この分譲地に家を建てた30代の男性は、千葉県流山市から家族3人で引っ越す予定で、「都内に近ければ近いほど土地の値段が上がってしまう。2歳の娘が走り回れるような庭をつくることができる広さをとれるのが、魅力的でした」と話していました。
また、以前から市内に住みことし4月から家族5人でこの分譲地に住み始めた男性は「ほかの分譲地でも常にどこかしら工事しているイメージがあります」と話し、周辺の宅地開発のスピードに驚いていました。
この分譲地の販売を行っている大和ハウス工業茨城支社住宅事業部の滝口桂司主任は「首都圏の通勤範囲のなかでみても、価格や土地の広さ、建物のボリュームが充実していて、選ばれる割合が多いのではないか」と話していました。

ことしの「地価調査」で、茨城県内の住宅地で上昇率が高かった1位から15位まではすべて、つくばエクスプレス沿線でした。
なかでも大幅な上昇がみられるつくばみらい市では、若い世代の移住の促進に取り組んでいます。
ことしの地価調査で、茨城県内の住宅地で最も上昇率が高かったのはつくばエクスプレスのみらい平駅に近いつくばみらい市陽光台4丁目で、去年より10.8%と大幅に上昇しました。
つくばみらい市は、都内へのアクセスの良さや都心より安く広い家が持てるといった利点を生かし、市民およそ300人の協力を得て市内での暮らしを紹介する動画やポスターを作成するなど、若い世代の呼び込みに力を入れてきました。
また、転入してきた人たちに住み続けてもらおうと、みらい平駅の近くに市民センターを開設して子育てに関する相談がワンストップでできるようにするなど、市民サービスの向上にも取り組んでいます。
去年9月からことし8月末までの1年間につくばみらい市に新たに転入した人は2800人余りと人口のおよそ5%を占め、このうち20代から40代が7割となっていて、市は移住促進の取り組みに手応えを感じています。
つくばみらい市の小田川浩市長は「動画やポスターでつくばみらい市の良さを広げていきたい。定住を中心としたまちづくりのために、教育や子育て施策に力を入れていきたい」と話していました。

浅草など観光地が多い東京・台東区の商業地のことしの上昇率はプラス2.7%と、横ばいだった去年に比べて大幅に改善しました。
国内の旅行需要が回復していることに加えて、水際対策の緩和に伴って今後、外国人観光客が増えると期待されているためです。
IT関連企業の「Agoop」が利用者の許可を得て個人が特定されない形で集めた携帯電話の位置情報のデータの分析によりますと、台東区の浅草寺周辺の9月前半の土日の15時台の人出は、感染拡大前の2019年との比較で、おととしと去年は、いずれも5割程度まで落ち込みました。
それがことしの同じ時期の人出は8割程度まで回復しているということです。
こうした傾向を反映して浅草・仲見世通り近くの地価は、上昇率が去年のマイナス1.7%からことしはプラス4.3%に回復しました。
商店街にある土産物店の店主は「一時期はほとんどいなかった修学旅行生や外国人観光客も増え、売り上げはコロナ前の7割程度まで回復している」と話していました。
一方、近隣にある外国人向けのホテルでは、今後、政府の水際対策の緩和に伴って外国人の利用の増加が期待されています。
このホテルでは、ことし8月の利用者数が去年の同じ時期に比べ2倍程度まで伸びたものの、利用者数は依然としてコロナ前の水準には戻っていないということです。
「サクラホステル」の大久保大輔さんは「個人の観光客が増えることやビザの取得が免除されることに期待している」と話し、水際対策の緩和に期待感を示していました。

不動産の調査やコンサルティングを行う「ジョーンズ ラング ラサール」リサーチ事業部の大東雄人さんは全国的な地価の上昇について「緊急事態宣言などの制限がなくなり、経済活動が再開するのに伴って人の流れも活発になり、土地の価格にも影響を及ぼした」とする一方、「これまでも地価が上昇しているところは上昇が続き、下落が続いているところは下落している」として、地域による格差の拡大に注意すべきだという見方を示しました。
また、住宅地が31年ぶりに上昇に転じたことについて、「コロナ前から住宅地の地価は回復傾向にはあったが、中心部が高騰するにしたがって、周辺部、さらには地方にも波及した結果今回の全国的な上昇につながったとみている。都心のアクセスが良い場所は依然として人気が高い一方、在宅勤務の普及によっていろいろな場所で仕事ができることから、住宅の需要のすそ野がより広がっている」としています。
一方で、商業地のうち都心部などでオフィスの空室率が目立ち地価の上昇が伸び悩んでいるとして、「在宅勤務の普及で大企業などが余ったオフィスから出る動きが積み重なった。ただ、本社機能をベースにしたニーズは再認識されている。今後、都内ではオフィスの供給が増えるため、各ビルは、ただオフィスを作るのではなくて、ほかのビルとの差別化によってテナントの需要を取り込めるかどうかが重要なポイントになっている」と述べました。
そのうえで、今後の見通しについては「外国人観光客が回復してくると土地の価格にプラスの影響がでると思う。日本の低金利、金融緩和が続けば日本の不動産や土地価格においてプラス、もしくは上昇を支える大きな要素になるのではないか」と述べました。