埼玉県が調査 在宅医療や介護従事者 訪問先での暴力などは

ことし1月、埼玉県内で訪問診療先の住宅を訪れた医師が殺害された事件を受けて、県が、在宅医療や介護に従事する人にアンケート調査をしたところ、回答した人の半数が、訪問先などで暴力やハラスメントを受けた経験があると回答したことがわかりました。

ことし1月、埼玉県ふじみ野市で起きた人質立てこもり事件では、訪問診療先の住宅を訪れた医師が散弾銃で殺害されたほか、同行した2人がけがをしました。
事件を受けて、県は3月から7月にかけて、在宅医療や介護に従事する県内の医師や看護師、ホームヘルパーなどを対象にインターネットでアンケート調査を行い、あわせて665人から回答を得ました。
その結果、過去に、患者や利用者、その家族などから暴力やハラスメントを受けた経験があると回答したのは337人と半数にのぼりました。
内訳は複数回答で、脅迫を含む精神的な暴力が73.3%、セクシュアルハラスメントが39.5%、身体的な暴力が28.2%でした。
なかには、包丁で威圧された、外に出られないよう玄関に鍵をかけられた、家族から執ように恫喝されたといったケースもあり、生命の危険を感じたことがあると答えた人は11.3%でした。
暴力などを振るわれた相手は、複数回答で、患者や利用者が76%と最も多く、その家族が40.1%でした。
今回の県の調査結果は、アンケートに応じた在宅医療や介護に従事する人の半数が、暴力やハラスメントを受けたことがあると回答したもので、患者や利用者の半数が暴力やハラスメントを行っていたことを表すものではありません。

さいたま市の訪問看護ステーションの所長で看護師の平井直子さんは、自宅で利用者に寄り添う訪問看護にやりがいを感じています。
訪問看護にあたっては、利用者や家族とコミュニケーションをとって、人間関係や価値観などを理解し、信頼関係を築くよう心がけているということです。
一方、過去には暴言を吐かれるなど怖い思いをしたこともあり、万が一の事態に備えて工夫を重ねています。
1人で訪問することが多いうえ、密室になりやすいことから、訪問先では玄関の鍵をかけないようにしたり、入り口に近い場所に座るようにしたりしています。
平井さんは「小さなハラスメントはたくさんあります。どのように防げるのか誰かに相談してみんなで対策を考える必要があると思います」と話していました。

病院で看護師長などを務めたあと訪問看護師として5年ほど在宅医療に携わった大畑みえ子さん(73)は、訪問先の認知症の男性の自宅で、危害を受けたことがあるといいます。
医師の指示で男性を病院に連れて行く際、男性の妻が「女と一緒に出かけるのね」と怒り出し、夫婦げんかの末、台所から包丁を持ち出したということです。
止めに入った大畑さんは包丁で切られて、軽いけがをしたということです。
利用者と信頼関係を築くなかで、家族から思わぬ感情を抱かれてしまう結果となり、利用者や家族との関わり方に難しさを感じたといいます。
大畑さんは「利用者に入り込みすぎず、かといって離れすぎないようにする、適切な距離感をとるのが難しいと感じます。看護師を守るには、2人で訪問するとか状況によっては訪問しないといった判断が必要だと思います」と話していました。

アンケート調査の結果などを受けて、埼玉県は、在宅医療や介護に従事する人たちのために、専用の相談窓口を設置するほか、警備会社と契約したり複数で訪問したりするための経費を補助するなど、対策を強化する方針です。
県は、必要となる1億9600万円余りを補正予算案に盛り込み、今月開かれる県議会に提出することにしています。
大野知事は「ふじみ野市で極めて痛ましい事件が起きたことは痛恨の極みで、在宅医療や介護の従事者全体に対して安全対策を講じなければならないと痛感した。可能なかぎり、すべてのハラスメントをなくし人の命が奪われることがないようにしたい」と話していました。