関東などで生乳販売の生産者団体 価格値上げでメーカーと合意

さまざまな食品の価格の高騰が続くなか、牛乳も値上がりが避けられない状況になりました。
関東地方を中心に生乳を販売する生産者の団体は、牛乳の原料となる生乳の価格を11月の出荷分から1キロあたり10円値上げすることで大手乳業メーカー3社と合意したと明らかにしました。
平成20年度に並ぶ、過去最大の値上げ幅で、団体側は、酪農家の経営が危機的な状況だとして、理解を求めています。

関東の1都6県と、山梨県、静岡県で生産された生乳を販売する業者でつくる「関東生乳販売農業協同組合連合会」=関東生乳販連は20日、都内で理事会を開き、大手乳業メーカー3社と交渉の結果、牛乳の原料となる生乳の価格を11月の出荷分からこれまでの1キロあたり119円から10円値上げすることで合意したと明らかにしました。
生乳の価格は牛乳のほかバターやチーズなど、用途別に決められますが、ふだんは年度ごとに決められます。
今回のように年度途中の値上げに踏み切るのは平成25年度以来だということで、1回あたりの値上げ幅としては平成20年度と並んで、過去最大だということです。
関東生乳販連は、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響や急激な円安などで乳牛のエサとなる穀物の輸入価格が高騰し、酪農家の経営が苦境にあるとして理解を求めています。
菊池一郎会長は「生産者の要望とメーカーサイドの考えの一致には正直、時間がかかった。メーカーに対しては15円の値上げを要求したが生産現場に跳ね返ることの懸念が強くあった。必ずしも満足ではないが、生産現場の疲弊を考えると、10円で早急に回答してほしいという意見だった」と話していました。
今回値上げに合意した大手乳業メーカーのうち「森永乳業」は「一部の商品の価格の見直しが必要になると考えられる。生産者団体と課題を共有したうえで引き続き消費拡大に取り組んで参りたい」とコメントしています。
また「雪印メグミルク」と「明治」は「商品価格は今後の市場の動向などを踏まえて検討していきたい」としています。

酪農家は、飼料の価格高騰で、経営がこれまで以上に苦しさが増しているとして消費者に理解を求めています。
千葉県八千代市の酪農家、加茂太郎さんの牧場では、およそ180頭の乳牛を飼育しています。
牧草や、トウモロコシなどからの配合飼料を与えていて、これまでも新型コロナウイルスの影響で値上げがありましたが、急速な円安の進展やロシアによるウクライナ侵攻などの影響でさらに値上げが続いているということです。
コストを抑えるため国産の米なども混ぜる努力も続けていますが、乳牛1頭に必要な飼料費は一日あたり、およそ1500円とこれまでの1.5倍ほどになっているということです。
その一方、一日に1頭が生産できる生乳の買い取り価格はおよそ3000円と、飼料費のほか、光熱費や人件費を差し引くと、経営は非常に苦しい状況だということです。
飼料の値上げが続く可能性もあり、電気代や燃料代の高騰も重なるなか、今後の状況によっては、人件費の削減にまで踏み込む必要性も感じているということです。
加茂さんは「20年ほど酪農に携わっているが、これほど飼料が値上げされるのは初めてで、仲間の中には、廃業に追い込まれた人もいる。生き物が相手なので、飼料などのコストを減らしたり、出荷量を調節したりすることは簡単にはできない。国産の乳製品を手に取って、日本の酪農を守ってほしい」と話していました。

酪農家から生乳の販売を委託されている団体は全国であわせて10あるということですが、関東生乳販連によりますと、ほかの地域でも値上げの交渉が進んでいて、今回の決定がほかの地域の議論にも影響を与える可能性があるとしています。

農業経済学が専門で広島大学大学院の長命洋佑准教授は「ここまで一気に価格が上がった例はあまり過去にない。生産者は、飼料価格の高騰によって経営の体力が徐々に削られている状況で非常に大きなダメージを受けている。一方、メーカー側も、消費者にできるだけ安い価格で商品を届けるようさまざまな苦労をしている」と述べました。
また、現状の課題について「国としては酪農家を増やしたり乳牛の頭数を増やしたりとトータルの生乳生産量を増やしたりするような方向に政策を持っていく一方、飼料の大半は海外に依存しているというような状況で、いわば、アクセルを踏みながらブレーキがかかってしまった。無理な状態のなかで生産していた問題が出てきた」と指摘しました。
今後について「国内で飼料を作る重要性は叫ばれているが、なかなか踏み出せない。海外の飼料に頼っていると今後も同様の事態になる可能性がある。今回、国内で飼料を生産できる体制を作る最後の機会なのではないかと強く感じている」と話しています。