【解説】「金融・資産運用特区」 期待と課題

「金融・資産運用特区」の指定について、経済担当の波多野新吾記者が解説します。

今回、金融庁から指定された「金融・資産運用特区」とはそもそもどういうものか?

国内外から投資資金を呼び込むため、国が新たに創設した制度です。
今回、全国で▼北海道、札幌市、▼東京都、▼大阪府、大阪市▼福岡県、福岡市の4つの地域が指定されました。

北海道と札幌は特区の指定によって国内外から投資資金を呼び込んで、どの分野の産業に力を入れていきたいとしているのか。

道と札幌市は脱炭素化に向けた企業や社会の取り組みを促す、GX=グリーントランスフォーメーションなどに力を入れていきたいとしています。
なかでも、北海道が高いポテンシャルを持つ洋上風力発電や、二酸化炭素を排出せず、次世代のエネルギーとして期待される水素などGX関連産業を発展させることを目指しています。
具体的には、▼法人設立に関する行政手続きを英語だけで行えるようにすることや、▼地域のスタートアップを金融面から支える人材を対象に新たなビザを創設すること、▼外国人の銀行口座開設にかかる時間を短縮することなどが検討されていて、海外の資産運用会社を含む金融機関を道内に呼び込んでいこうとしています。
道と札幌市は10年間で40兆円の投資を呼び込みたいとしていて、関連する企業からは事業の拡大に向けた期待の声が聞かれました。
道内で初めてとなる大型車向けの水素ステーションの建設が進められている札幌市が設けた「水素モデル街区」です。
乗用車だけでなく、水素の利用がより効果的とされるトラックやバスにも水素を供給できるようにするもので、展開する会社では、特区の指定を機に、再生可能エネルギーを使った水素の製造や供給網の構築を目指していきたいとしています。
エア・ウォーターの唐渡有北海道代表は、「いろんな手法を集めてとにかく水素の社会をつくっていかないといけないだろうなということで私ども単独でそれはとてもやりきれないですが、今回の特区の指定も含めてみんなが同じ方向にベクトルをあわせていけるということで、いろんな可能性を後押ししてくれるということでありがたいことだと思っています」と話しています。
海外から投資を呼び込むと聞くと、私たちの生活から縁遠いと感じる人もいると思いますが、先ほど紹介した企業だけでなく、実は地元企業にも関わるチャンスが増えることで、経済への波及効果も期待されています。

前向きに進んでいきそうな流れだが、課題は何か?

環境分野への投資は世界中から注目を集めている分野です。
専門家は、そうした中で北海道に投資を呼び込むためには、▼外国語に対応できる人材の育成や▼官民一体となった投資環境のさらなる整備などが求められると指摘しています。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高まりフェローは、「環境問題と経済問題はイコールとなってきている。日本だけでなく、アメリカも欧州もグリーンの資金がどんどん出ていると、英語がうまく使えるような場所でないと残念ながら海外の投資は入ってこない。これはシンガポールなどが進んでいるのは英語が金融機関で共通語になっているわけで。こういったことも北海道で進まなければ海外からの投資も呼べないというところもある、そういったところも期待したい」と話しています。
札幌市は、早ければ来月にも、この特区を活用して事業に参入する企業の募集を始める方針です。
今回指定された特区をチャンスとして、どう生かしていくのが問われています。