新紙幣発行まで1か月 券売機の対応は 詐欺には十分注意

20年ぶりとなる新たな紙幣の発行まで3日であと1か月です。道内の企業では券売機などの更新作業が進められる中、中小の事業者の間にはキャッシュレス決済の拡大や独自の工夫で対応しようという動きも見られます。

新紙幣の発行は来月3日に始まります。
▼一万円札は「近代日本経済の父」と呼ばれる渋沢栄一、▼五千円札は日本で最初の女子留学生としてアメリカで学んだ津田梅子、▼千円札は破傷風の治療法を開発した細菌学者の北里柴三郎の肖像がデザインされます。
紙幣のデザインの変更は2004年以来、20年ぶりで▼偽造防止の強化と▼誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の導入が目的です。
財務省によりますと、発行の開始までに▼金融機関のATMは9割以上、▼鉄道の切符を扱う券売機や、大手コンビニ・スーパーのレジは8割から9割で更新などが完了する一方、▼コインパーキングなどの自動精算機や飲食店の食券などの券売機は5割程度、▼飲料の自動販売機は2割から3割にとどまるとみられます。
道内の企業でも券売機などの更新作業が進められる中、中小の事業者などからは更新費用の負担が大きいという声も聞かれ、キャッシュレス決済の拡大のほか、券売機を利用する際にいまの紙幣と交換するなど独自の工夫で対応しようという動きも見られます。

【新紙幣の最新技術を紹介】
小樽市の日本銀行旧小樽支店では新たな紙幣を紹介する展示会が開かれています。
会場には▼渋沢栄一の肖像が描かれた一万円札や、▼津田梅子が描かれた五千円札、▼そして北里柴三郎が描かれた千円札の見本が展示されています。
新しい紙幣には偽造防止のための技術が用いられていて、▽紙幣を見る角度を変えると肖像の向きが変わる最先端のホログラム技術が導入されているほか、▽光をかざすと現れる「すかし」にはきめ細かく精密な模様が施されています。
また、誰でも利用しやすいよう「ユニバーサルデザイン」が採用され、▽数字のサイズはこれまでよりも大きくなっているほか、▽指で触るだけで紙幣の種類の違いがわかるよう凹凸のある11本の斜線が入れ込まれています。
大阪府から訪れた30代の男性は「デザインや偽造防止技術にもいろいろなものがあり、さすが日本の技術だと感心しました。これまでとかなり変わるので、実際に手にとることがすごく楽しみです」と話していました。
札幌市から訪れた小学1年生の男の子は「カラフルでかっこいいので、いままでのお札よりレベルアップしたみたいです」と話していました。
日本銀行旧小樽支店金融資料館の立島信幸副館長は「新しい紙幣を手にとられたらいろいろな技術をぜひ見ていただき、親しみをもってもらえるとうれしいです」と話していました。
この展示会はことし9月24日まで開かれています。

【新紙幣はどうやって入手?】
道内の地方銀行2行によりますと、新たな紙幣は発行が始まる来月3日以降、各支店やATMなどで順次、入手可能になるということですが、初日から取り扱いを開始できるかはわからないということです。
また、当初は流通量が十分ではないことから窓口などで希望しても数日かかったり、対応できなかったりするケースがあるとしています。
日本銀行によりますと、新たな紙幣は来年3月末までに74億8000万枚が国立印刷局で印刷される予定で、20年前にいまの紙幣が発行されたときには1年間で全体の6割あまりが切り替わったということです。

【地下鉄やJRなどの対応は】
新しい紙幣に対応するため、地下鉄やJRでは券売機などの更新作業が進められています。
札幌市交通局によりますと地下鉄の自動券売機についてはこれまでに全体の8割が更新を終えていて、3つの路線あわせて49の駅すべてで新紙幣を使うことができるということです。
実際に東西線の大谷地駅では、新しい紙幣に対応している券売機が2台あり、タッチパネルの操作画面の上部が緑色になっています。
一方、上部が白色の券売機は対応していませんが、駅の窓口では紙幣の交換や両替に応じる方針で、券売機は来年度中に更新される予定です。
札幌市交通局の長岡佑介業務課長は「地下鉄の駅では新紙幣を使うことができないところはないので、これまでどおり利用していただきたい」と話しています。
またJR北海道では▼駅員が常駐する駅の券売機はすべて改修済みですが、▼無人駅の券売機は取り替え作業が必要になるということで、▽しばらくの間はいまの紙幣を使うか▽列車の中や降りた駅で切符を購入してほしいとしています。
このほか、札幌市の中心部を走る路面電車はことし9月以降、車内の運賃箱の更新作業を進めることにしていて、対応を終えるまでは運転手が紙幣の交換や両替を行います。
また札幌市内を走る路線バスのうち▼じょうてつバスはすべての車両で対応済みとしている一方、▼北海道中央バスは現在、対応を検討中で、▼ジェイ・アール北海道バスは順次、更新作業を進めていて新たな紙幣を使う場合は乗務員などに確認してほしいということです。

【券売機更新しない店も】
中小の事業者からは券売機などの更新費用の負担が大きいという指摘もあり、キャッシュレス決済の拡大や独自の工夫で対応しようという動きもあります。
このうち札幌市中央区のそば店では4年前に食券を販売する券売機を導入し、ランチタイムに活用しています。
店によりますと新たな紙幣に対応可能な券売機に更新した場合、最大300万円の費用がかかるということで、しばらくのあいだ導入を見送ることにしました。
来月3日以降、新しい紙幣については▼店の券売機で利用できるいまの紙幣と交換する形で対応するほか、▼すでに導入しているキャッシュレス決済をすすめることにしています。
そば店の住川恒郎店長は「必要経費を抑えることでメニューの値上げにつながらないよう努めている。券売機の更新は大きな負担なので、新しい紙幣の流通が一定程度、進むまでは自分たちで工夫することでコストを抑えていきたい」と話していました。

【日銀「誤情報や詐欺に十分注意を」】
一方、新しい紙幣が発行されてもいまの紙幣はこれまでと変わらず使うことができます。
このため日本銀行は紙幣を交換する必要は無いとした上で、「従来の紙幣が使えなくなる」などの誤った情報や詐欺に十分注意するよう呼びかけています。