【滞在記・厚沢部編】46年目のサンタ 湯田さんと過疎のまち

地域にディープな人脈をもつローカルフレンズのもとにディレクターが1か月滞在する「ローカルフレンズ滞在記」。5月は道南の厚沢部町を舞台にお送りしてきました。

町で1か月暮らした南崎ディレクターがもっとも驚いたことの一つが、“湯田サンタ”という存在を町の誰もが知っていることでした。町の衣料品店の店主・湯田皓二さんは現在82歳。およそ半世紀ものあいだ、子どもたちにクリスマスプレゼントを配る“サンタ活動”をしてきたといいます。

湯田さんが生まれ育ったのは、町の人口が1万人を超え、多くの子どもでにぎわった時代。その中で湯田さんは大病を患い、胃の大半を摘出する手術を経験します。その経験を機に、やりたいことをやろうと思うようになったという湯田さん。子どものころ自分の家にサンタが来なかった苦い経験から“町のすべての子どもにプレゼントを配る”ことを決意しました。湯田サンタ誕生の瞬間です。

サンタになってことしで46年目。かつての子どもたちは親になり、その子どもたちに接することも増えました。また母の日には町の福祉施設に行きプレゼントを贈ったり、懇意にしている陶芸家に作業着を贈ったりと、子どもにも大人にも幸せを贈り続けています。町の人口は3300と大きく減り、過疎化は進んでいますが、だからこそ“ほぼ全員と顔見知りになった”といいます。湯田さんは人と人とが深く結びつく、厚沢部町という町を象徴している存在に見えました。