別海町子牛被害 ヒグマわなにかからず 専門家“早期対応を”

道東の別海町の牧場で8頭の子牛がヒグマに襲われたとみられることを受けて、町は捕獲のため牧場内にわなを設置していますが、午後5時の時点でヒグマはかかっていないということです。道東では「OSO18」と呼ばれたヒグマが去年、駆除されるまでに66頭の牛を襲っていて、専門家は、今回のケースについて早期に対応するよう呼びかけています。

別海町中春別にある牧場では21日、乳牛を飼育している施設の中で、8頭の子牛が死んだり、けがをしたりしているのが見つかりました。
現場からはヒグマのものとみられるおよそ17センチほどの足跡が複数見つかったことから、子牛はヒグマに襲われたとみて、町は牧場内に捕獲のために箱わなを設置し、22日午前9時半ごろ町から牧場に3人の担当者が派遣されました。
町によりますと、午後5時の時点でヒグマは箱わなにかかっていないということです。
牧場によりますと、けがをした4頭の子牛は回復の見込みがないことから殺処分されたほか、無事だった子牛は別の牛舎に移動させたということです。
今後の対策として、牛舎の入り口には金属製の扉を設置し、ヒグマが侵入できないようにするほか、警戒のため従業員にはクマよけのスプレーや鈴を配布し、見回りも複数人で行うとしています。
道東では「OSO18」と呼ばれたヒグマが2019年から去年駆除されるまでに、あわせて66頭の牛を襲う被害が発生していて、町や警察は周辺の牧場に警戒を呼びかけています。

【被害にあった牧場は】
被害を受けた「なかしゅんべつ未来牧場」の友貞義照専務は、「OSO18は放牧地などのあまり人目のつかないところに出ていたが、今回は施設の中に入ってきた。まさかうちの子牛が襲われるとは思ってもみなかった。子牛を狙ってきていることも気がかりなので、捕獲してほしいし、これ以上近隣の酪農家にも被害がなければいい」と話していました。

【ヒグマの生態に詳しい酪農学園大・佐藤喜和教授の話】
別海町の牧場で8頭の子牛がヒグマに襲われたとみられることについて、ヒグマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授は、「森から大きく離れた建物があるようなところで被害があったと聞いて驚いている。足跡がおよそ17センチということから、オスの成獣だと考えられ、今回の牧場に再び牛を狙って現れる可能性もあり、被害が繰り返されることも考えられる。そういった現場に人がばったり出くわしたら、とても危険だ。明らかに人の生活圏内に侵入してきているので、早急に駆除することが適切な対応だ」と指摘しています。
その上で、現場の周辺に住む人に対しては、「日常生活の中でクマとばったり出会う可能性があるということを認識したうえで、しばらくは単独で行動しないでほしい」と呼びかけています。
道東では、「OSO18」と呼ばれたヒグマが2019年から去年にかけて合わせて66頭の牛を襲う被害が発生し、去年駆除されています。
佐藤教授は、「OSOは長期に渡って被害が出たが、今回は、まだ出始めの被害とみている。早い段階で駆除をするなど何らかの対策を取ることで、問題が長引かないように地元で対応に当たって欲しい。農業関係者は家畜が襲われるリスクがあると認識をして、事前にクマが入らないような対策をお願いしたい」と話していました。