クマの活動活発に 市街地で相次ぐ出没にどう備えるか

道内では冬眠から覚めたクマの活動が活発になり、先月以降、目撃などが相次いでいます。道警によりますと、ことしに入って13日までにクマに関する通報は320件、寄せられていて、けが人も1人出ています。また、道も、出没情報などをもとに独自の注意喚起を行っていて、14日現在、日高の浦河町と様似町に「ヒグマ注意報」を出し、山菜採りなどの際にはクマとの遭遇に十分注意するよう呼びかけています。

【相次ぐ市街地でのクマの出没】
一方、ことしは市街地でもクマの出没が相次いでいます。
このうち札幌市西区西野では今月7日と10日、住宅地の近くでクマの目撃が相次ぎました。
クマがいたのは住宅からわずか30メートルほどの場所で、市の担当者によりますと、裏山には落ちたクルミの実を食べようとしたのか、土を掘り返した跡などが見つかったということです。
このため札幌市は先週、クルミの木の周囲およそ100メートルにわたって電気柵を設置したほか、看板を設置して付近の住民に注意を呼びかけています。
また市は、市街地の家庭菜園などに使う電気柵の貸し出しや購入費用の助成をことしも行うことにしていて、今週金曜日から申し込みを受け付けることにしています。
札幌市の坂田一人環境共生担当課長は、「クマが身を潜めやすい市街地の茂みで草刈りなどを続けているが、住民の方には市の補助金を活用した電気柵の設置などをぜひ検討してほしい」と話しています。
【自宅用にクマよけスプレーを購入する動きも】
市街地周辺での出没に備えて、本来はアウトドアで使うことが想定されているクマよけのスプレーを自宅用に購入する動きも出ています。
札幌市中央区にあるアウトドア用品の専門店では、先月(4月)以降、クマよけのスプレーや鈴などの売れ行きが伸びているということです。
このうちスプレーについては、登山の愛好家が山に携行するために買い求めるのに加え、最近は、市街地でのクマの出没に備えて自宅用に購入するケースが増えているということです。
一部の商品は入荷するとすぐに売れて在庫がなくなる状況だということですが、石井スポーツ札幌店の藤野裕喜マネージャーは「スプレーにはとうがらしの成分が入っていて刺激がとても強いため市街地で誤って噴射すると周りの人にも影響が出るおそれがあります。万が一のとき以外は使用せず、子どもの手の届かない場所に保管するなど対策をとってほしいです」と話していました。

【クマの出没にどう備えるか】
市街地での出没にどう備えればいいのか、クマの生態に詳しい北海道大学大学院獣医学研究院の坪田敏男教授に話を伺いました。
まず、市街地近くでの目撃が相次いでいることについて坪田教授は「生息する範囲が広がり、住宅地の近くまでクマが出てくる可能性は増えているが、人を襲う目的ではない」と話していました。
そのため、万一、目撃した場合でも「刺激を与えずに距離を保ち、クマが山の中に帰るのを待つことが重要だ」としています。
また、3年前に札幌市で起きたような、市街地でクマが人を襲うケースは頻度としては極めて少ないと指摘した上で、「市街地に出たクマは慣れない場所で興奮状態になっているため、一般の人が対処することは難しい。ハンターなど専門家に任せて建物の中に避難するなど身を守る行動を取ってほしい」と話していました。
このほか坪田教授は、そもそも市街地にクマを引き寄せないようにするには、屋外に出す生ごみを鍵のかかる場所でしっかりと管理するほか、茂みの草を定期的に刈り取るなどの対策が必要だと強調していました。