“意欲わかない”“体調悪い”「五月病」の相談増 対策は

大型連休が明けて以降、何事にも意欲がわかない、職場や学校に行きづらい、といった状態になっている人も少なくないと思います。
厚生労働省のホームページでは、新しい環境への適応がうまくいかず、なんとなく体調が悪いとか、やる気が出ないといった心身の不調があらわれる状況が「五月病」と呼ばれていて、正式な病名ではないものの医学的には「適応障害」や「抑うつ状態」などの病気と関係があるとされているとしています。現状と対策を取材しました。
【街の人は】
大型連休が明けてほぼ1週間。札幌市中心部で道行く人たちに心身に不調がないか、聞きました。
このうち関東地方から訪れたという30代の女性は「朝起きたときや、仕事が終わったときに、もう職場に行きたくないと思うことがあります」と話していました。
また20代の男性は「今日のように曇りや、どんよりとした天気のときは気分が乗らない。そういう時は音楽を聴いて頑張ろうと思うようにしてます」と話していました。
30代の主婦の女性は「朝すっきり起きられないというのはありますね。子どもが、ほらもう時間だよ、そろそろご飯作らないと間に合わないよ、と言ってくれるので、そうだよねと諦めて頑張っています」と話していました。
【職場にカウンセラーを】
札幌市中央区にある日本産業カウンセラー協会北海道支部では、職場でのメンタルヘルス=精神面の健康の観点から「職場の中にカウンセラーとしての能力を発揮できる人を確保してほしい」として、企業や自治体などに対し、カウンセラーの育成研修といった支援を行うとともに、「メンタルヘルスの問題は、内部に抱え込みがちなので、はやめに外部機関に相談してほしい」と呼びかけています。
協会では、「五月病」をはじめとする心身の不調に悩む社員や職員から直接、相談を受けることに加え、そうした人たちを職場でサポートする企業や自治体の人材を育てる研修を開いています。
このうち民間資格の「産業カウンセラー」の養成講座では、100時間余りに及ぶカウンセリング実習などを通じて職場でカウンセラーとしての役割を果たせる能力を身につけてもらっています。
協会によりますと、道内ではこの講座は、以前は心理学に関心がある大学生などの受講が中心でしたが最近は企業の人事担当者や管理職など、実際に企業で働く人の受講が増え、去年は46人、ことしは先月までに25人が受講したということです。
また、道内で去年から始まった、「心の健康アドバイザー」の認定講座は、ウェブ上の学習などを通じて、産業カウンセラーの養成講座と比べて短期間で、必要な知識を学ぶことができます。
日本産業カウンセラー協会の林美幸北海道支部長は、「協会の研修を通じて、職場の中にカウンセラーとしての能力を発揮できる人を確保してほしい。メンタルヘルスの問題は、社員個人はもちろん、職場全体としても内部に抱え込みがちなので、はやめに外部機関に相談してほしい」と話していました。
【札幌市内のメンタルクリニックでは】
札幌市西区にあるメンタルクリニックには、大型連休が明けて以降、何事にも意欲がわかない、とか職場や学校に行きづらい、といったいわゆる「五月病」の状態を訴え訪れる人が増えているということです。
13日正午ごろ、クリニックの待合室ではおよそ20人が相談待ちの状況でクリニックの胡青余院長によりますと、1日あたりの相談数は平常時の1.2倍から3倍に増えているということです。
胡院長は、新年度の入学や入社、転勤などで環境が変わってストレスを感じ続けた末、心身の不調が実際にあらわれ始めるのが、大型連休明けのこの時期ではないかとみています。
その上で、予防策として、しっかりと睡眠時間を確保することや、日の光を浴びて、不安を和らげる脳内物質の「セロトニン」の分泌を促すことに加え、嫌なことや気にかかることがあれば紙に書き出し、その紙を丸めてゴミ箱に捨てるといった方法も気分を変える上で有効だとしています。
それでも心身の状態が改善せず、特に朝起きたときに常に気持ちが沈んでいる場合は、状態が重くなっている可能性があるとして、医療機関への相談を呼びかけています。
胡院長は「一般的なかぜやけがと同様に、『五月病』も1度重くなると、回復に時間がかかります。メンタルクリニックの受診にハードルを感じることなく、少しでも不調を感じたら早めに相談してほしい」と話していました。
【相談先】
いわゆる「5月病」の状態など心身に不調を感じる場合は、1人で抱え込まず、早めに公的な機関が設けている相談先に連絡してみて下さい。
▼「こころの電話相談」       0570−064−556
▼「北海道立精神保健福祉センター」 011−864−7000
▼働く人の「こころの耳電話相談」  0120−565−455
▼「チャイルドライン」       0120−99−7777
▼「日本産業カウンセラー協会札幌相談室」
                  011−209−7000