脱レアメタルでリチウムイオン電池の材料開発に成功 北大など

蓄電池として幅広く利用されているリチウムイオン電池を、希少金属のレアメタルを使わず入手のしやすい鉄を使って作り、従来と同等レベルの性能を実現することに、北海道大学などの研究グループが成功しました。レアメタルの資源枯渇への対応や、蓄電池の低コスト化につながる成果として注目されています。

成功したのは、北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授らの研究グループです。
グループは、高性能な蓄電池として幅広く使われているリチウムイオン電池について、主要な部品となる「正極」の材料に使われるコバルトやニッケルなどのレアメタルに代わる新たな材料の開発を進めました。
具体的には、鉄を主な成分とした「リチウム鉄酸化物」と呼ばれる化合物に着目し、レアメタルを使わなくても既存の電池を上回る大容量の電池を作れることを明らかにしました。
その上で、充放電を繰り返した際の劣化を防ごうと、シリコンやリンを混ぜ込んだところ、電池の耐久性能を既存のリチウムイオン電池の9割程度まで上げることが出来、電池の材料としての有効性が証明できたということです。
材料自体の価格をレアメタルを使った場合の10分の1以下に抑えられる可能性があるということで、小林准教授は、「幅広くリチウムイオン電池が安定的に低コストで普及できる可能性があり、企業との共同研究などを通じて電池として使えるようブラッシュアップしたい」と話しています。
【再生可能エネルギーの普及に蓄電池は不可欠 新材料に期待】
蓄電池は、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車などに用いられ、生活に欠かせないものとなっていますが、部品に使われる希少金属のレアメタルの資源の枯渇や価格の高騰が深刻な課題となっています。
また、蓄電池は発電量が気象条件に左右される風力や太陽光と言った再生可能エネルギーの普及に伴って、生み出された電力を貯蔵するため、不可欠となっています。
30日までイタリアで開かれていたG7=主要7か国の気候・エネルギー・環境相会合では、再生可能エネルギーの拡大に向け蓄電池などによる電力の貯蔵量を2030年までに6倍あまりとする方針が示され、そのために、蓄電池の新材料の開発を進めることが盛り込まれました。