釣り人でにぎわう留萌港 日本海側中心にイワシの大群 なぜ?

先月以降、季節外れのイワシの群れがたびたび押し寄せている北海道北部の留萌市の港では、釣り人がにぎわっていることから、海上保安部は水難事故に注意するよう、呼びかけを行いました。

留萌港では先月3日から下旬にかけ、この時期には例年見られないイワシの群れがたびたび押し寄せ、連日、道内各地から訪れた釣り人でにぎわっています。
2日はイワシから一転してホッケやカレイなどが釣れていましたが、留萌海上保安部は釣り場での水難事故を防ごうと、職員3人が港の岸壁を訪れ、注意を呼びかけました。
職員たちは釣り人一人ひとりにライフジャケットを正しく着用することや、海に転落してもすぐに救助できるようなるべく複数で行動することなどを求めました。
旭川市から訪れた80代の男性は「釣りを楽しむ際はライフジャケットを必ず身につけています」と話していました。
海上保安部によりますと、留萌港では去年までの5年間に釣り人が転落する事故が3件起き、1人が死亡したということです。
留萌海上保安部の村井信愛交通課長は「釣りをする際には安全対策をしっかりお願いします。もし海で事故があれば緊急通報ダイヤルの118番に電話してください」と話していました。
【イワシの大群は去年12月以降各地で】
北海道の日本海側を中心に去年12月以降、沿岸にイワシの大群が押し寄せる現象が各地で見られ、海岸などに打ち上げられるケースも相次いでいます。
去年12月には函館市の海岸などで推計でおよそ1100トンに上るイワシなどの魚が打ち上げられたほか、ことし1月には道南のせたな町の海岸で数十トンのイワシなどの魚が打ち上げられました。
また、ことし3月には小樽市の海岸でもイワシなどの魚が大量に打ち上げられていたほか、先月には留萌市の港でも同じようなケースが確認されています。
さらに、札幌市北区の釣り具店によりますと、ことし3月から石狩湾新港にイワシの群れが押し寄せていて初心者でも釣れると評判になり、多くの釣り人で賑わうようになったということです。
先月16日に釣り具店の店長が石狩湾新港で撮影した動画でも多数のイワシが浅瀬を泳いでいる様子が肉眼で確認できます。
釣り具店のフィッシュランド太平店の小田純平店長は「長く釣りをしているがこれだけイワシが来ているのは珍しい。普段釣りをしない人が簡単に釣れるからと釣りを始めるきっかけになってくれている」と話していました。
北海道立総合研究機構・中央水産試験場によりますと、イワシは北海道の海岸では例年12月以降はほとんど姿が見えなくなり、5月以降になってから釣れるようになるのが一般的で冬から春にかけての時期にこれだけの数のイワシが押し寄せるのは非常に珍しいということです。
【専門家は】
なぜ、季節外れのイワシの群れが沿岸に押し寄せる現象が北海道の日本海側を中心に去年12月以降、各地で見られ、海岸などに打ち上げられるケースも相次いでいるのか。
北海道立総合研究機構・中央水産試験場の山口浩志研究主幹は去年12月以降の北海道沖の日本海の海水温の変化が関係しているのではないかと指摘しています。
山口研究主幹によりますと、各地に押し寄せているのは主にマイワシで、海水温が10度前後の海域を回遊するため例年、北海道沖の海水温がそれを下回る12月以降は北海道より南の海域に移動しているということです。
しかし、気象庁の観測によりますと、去年12月からことし1月の北海道沖の日本海の海水温は平年より2度から3度ほど高い9度前後だったため、南下せずに北海道沖にとどまったマイワシが多くいたということです。
ところが北海道沖の海水温はその後、ことし3月から先月にかけて平年より1度ほど低い5度前後まで下がりました。
海水温の低下とともに、とどまっていたマイワシの動きも鈍くなり、しけの影響などで流されて海岸などに打ち上げられるケースが相次いだとみられるということです。
一方、海水温が下がる前の去年12月に海岸にイワシが打ち上げられた函館市のケースについては、南下せずにとどまっていたマイワシの群れがほかの魚などに追われるなどして海岸近くに殺到した結果、酸欠になって死んだとみられるということです。
山口研究主幹は「イワシがここまで広い範囲で来遊したというのは珍しく、日本海側のほぼすべての港で姿が確認できた。ただ、今後、海水温が上がって活動的になると沿岸近くにとどまっているイワシが沖合まで出て行く可能性がある」と話しています。
また、生態系への影響については「イワシはもともと群れを作って泳いでいて、この規模で海岸に打ち上げられても生態系への影響はあまりない。一方、沿岸部にとどまったイワシを捕食しにホッケが集まり、ホッケの脂の乗りがよくなるなど漁業面ではよい影響も出ている」と話していました。