札幌五輪金メダル 笠谷幸生さん死去 道内から悼む声

１９７２年の札幌オリンピックのスキージャンプで日本選手が表彰台を独占した「日の丸飛行隊」のひとりで、金メダルを獲得した笠谷幸生さんが今月２３日に札幌市内の病院で亡くなりました。
８０歳でした。

笠谷さんはスキージャンプの選手として１９７２年の札幌オリンピックでは自国開催の重圧をはねのけて海外の強豪を相手に金メダルを獲得しました。
冬のオリンピックで日本勢初めての金メダル獲得という偉業で、銀メダルの金野昭次さん、銅メダルの青地清二さんとともに日本選手が表彰台を独占したその姿は「日の丸飛行隊」として語り継がれ、海外でも称賛されました。
現役引退後は指導者として活躍し、１９７８年から全日本スキー連盟のジャンプコーチに就任するなど後進の育成に力を尽くしました。
さらに、国際スキー連盟の国際審判員として冬のオリンピックで審判も務めるなど指導者、競技団体の役員としても長年にわたって日本のスポーツ界の発展に貢献し、２０１８年には文化功労者に選ばれました。
全日本スキー連盟は２６日、笠谷さんが亡くなったと発表し、連盟の勝木紀昭会長は「札幌オリンピックでの金メダル獲得は日本のスキー界に大きな影響を与え、現在の日本のジャンプ選手の快進撃の幕開けだったと思う。選手時代の活躍と指導者として多くの優秀な選手を育成した功績は日本スキー界の宝だ」とコメントしています。
関係者によりますと、笠谷さんは今月２３日に札幌市内の病院で亡くなったということです。
８０歳でした。

【札幌市民からは当時の活躍を懐かしむ声】
笠谷さんの訃報を受けて、札幌市民からは当時の活躍を懐かしむ声が聞かれました。
当時、中学生だったという６０代の女性は「亡くなられたと聞いてさみしく感じました。当時は学校の授業がなくなり、テレビにくぎづけになりながら表彰式の様子を見ていたのを思い出しました」と話していました。
また、７０代の男性は「当時は就職したばかりで、先輩と一緒にテレビでテレマークを決めた姿を見たことを今でも鮮明に覚えています。活躍された人が亡くなるのを聞くのはさみしいですね」と話していました。
【長野五輪団体金メダルの原田雅彦さんのコメント】
笠谷幸生さんが亡くなったことを受けて、長野オリンピックのスキージャンプ団体で金メダルを獲得した原田雅彦さんはコメントを発表しました。
原田さんは「突然の訃報で悲しい思いでいっぱいです。笠谷さんは、札幌オリンピックの金メダリストとして憧れの選手でしたが、指導者となられてから大変お世話になりました。常に寄り添い、たくさんの事を教えて頂き、私が途方に暮れた時も、力強く励ましてくれた事を今でも忘れません。そのおかげで自信を持ち、ジャンプ選手として成長出来たと思っています」と笠谷さんへの感謝の思いをつづりました。
そのうえで「全日本スキー連盟やＪＯＣ理事などの時も、オリンピックのたびにジャンプを助けて頂き、長野では世界一へと導いてくれました。本当にありがとうございました。心から感謝し、尊敬しています」とコメントしました。
【葛西紀明選手のコメント】
笠谷幸生さんが亡くなったことを受けて札幌オリンピックが行われた１９７２年に生まれたスキージャンプの葛西紀明選手は、「私が生まれた年の札幌オリンピックで金メダルに輝かれた笠谷さんは子どものころから憧れの存在だった。日本のスキージャンプ界を代表する偉大な方の訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、心よりご冥福をお祈りいたします」というコメントを発表しました。
【札幌五輪ミュージアム館長のコメント】
笠谷幸生さんが亡くなったことを受けて、札幌オリンピックで笠谷さんが使ったスキー板やジャンプスーツなどを展示している札幌オリンピックミュージアムの阿部雅司名誉館長が取材に応じました。
阿部さんはリレハンメルオリンピックのノルディック複合団体で金メダルを獲得し、引退後は日本代表のコーチを務め当時、全日本スキー連盟の競技本部長だった笠谷さんと言葉を交わしていました。
阿部さんは、「笠谷さんは冬のオリンピックの象徴的な存在なので亡くなられたと聞いてショックだった。ノルディック複合の方も暖かく見守ってくれてかなり低迷していた時期だったが、『大丈夫だ』といつも励ましてくれたことを覚えている。『いま我慢すればいい結果がでるから心配するな』とコーチやスタッフ陣に声をかけていただいていた」と振り返りました。
その上で阿部さんは「笠谷さんがウインタースポーツを盛り上げ今もジャンプでは小林陵侑選手などが世界で活躍している。これを築いたのは笠谷さんだと思うので、切らさないようにこれからも若手を育成し、ウインタースポーツをもっと盛り上げていきたい」と誓いました。
そして「日本人で初めて冬のオリンピックで金メダルを獲得し、注目されたなか頑張ってきて、大変だったと思う。葬儀で最後に顔を見たがほっとしたような顔をされていた。『ゆっくり休んでください』と言いたい」と話していました。
【所属していたニッカウヰスキー為定一智社長のコメント】
亡くなった笠谷幸生さんは後志の余市町に蒸留所があるニッカウヰスキーに１９６７年に入社したあと、総務や営業の業務を行いながら、所属選手として練習に励みました。
社員になったあとでは、オリンピックの札幌大会をはじめ、３大会に出場しました。
ニッカウヰスキーの為定一智社長は「偉大な先輩、笠谷幸生さんご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。札幌オリンピックでの笠谷幸生さんの活躍は、ニッカウヰスキー社員に歓呼と勇気を与えてくれました。世界に飛躍した笠谷さんのように、ニッカウヰスキーを世界に飛躍させていくことを誓います」とコメントしています。
【鈴木知事のコメント】
笠谷幸生さんが亡くなったことを受けて鈴木知事は「突然の訃報に接し、深い悲しみを覚え残念でならない。笠谷さんは現役引退後、コーチとして後進の指導にあたり、北海道はもとより、日本のスキージャンプ界の発展に貢献いただいた。心より哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみを申し上げる」とするコメントを発表しました。
【札幌市 秋元市長のコメント】
笠谷幸生さんが亡くなったことを受けて札幌市の秋元市長は「『日の丸飛行隊』の一員として活躍された姿は今も多くの道民・市民の目に焼き付いていて、誇りです。引退後も、コーチとして後進の育成、指導に力を注がれただけでなく、国際飛型審判員として数多くの国際大会にも関わるなど、スキー競技の普及振興に貢献いただきました。生前のご功績をたたえ、安らかな旅立ちを心からお祈り申し上げます」などというコメントを発表しました。