“消滅する可能性がある” 道内は117自治体 人口戦略会議

民間の有識者などでつくる「人口戦略会議」は、2050年までに道内の117の自治体で20代から30代の女性が半減し、最終的には消滅する可能性があるとした分析を公表しました。

有識者のグループ「人口戦略会議」は、国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとに、20代から30代の女性の数、「若年女性人口」の減少率を市区町村ごとに分析しました。
分析では2050年までの30年間で、道内で若年女性人口が半数以下になる自治体は117あり、このうち登別市や北斗市など9自治体で新たに人口が急減し、最終的に消滅する可能性がある「消滅可能性自治体」とされました。
今回、公表された道内117の自治体で20代から30代の女性の減少率が最も大きかったのは、歌志内市の86.7%、次いで木古内町と松前町で82.8%、上砂川町で82.1%でした。
また前回のレポートで「消滅可能性自治体」と指摘されたものの、今回は該当しないとされたのは、仁木町や旭川市、北見市など37の自治体で、このうち30の自治体では若年女性人口の減少率が10ポイント以上改善していました。
【消滅可能性自治体の一つ 歌志内市の声】
2050年までの30年間で、若年女性人口が半数以下になり、最終的に消滅する可能性がある「消滅可能性自治体」のうち、最も減少率が大きかった歌志内市で住民の声を聞きました。
歌志内市で生まれ育った70代の男性は、「働く場所が歌志内には少なく、誘致する企業が無いのと新しい企業が来てもなかなか定着していかない。人が集まるような仕掛けを役所などが率先しておこなわないと若い人もいなくなってしまう」と話していました。
90代の女性は、「人口が増えてまちがよくなることを期待したいが、炭鉱が閉鎖するなどして産業が減り若い人は職を求めて他のまちにいってしまっている」と話していました。
子育て中の20代の女性は、「周りの同級生は大学や専門学校に進学して札幌など都会で就職している。若い人が少ないためか子どもも少なく感じる。子育ての手当もあるほか優しい人が多く自然も豊かなまちなのでぜひ、歌志内に移住してほしい」と話していました。
【10年前“消滅可能性”→今回“該当せず” 仁木町の取り組み】
10年前のレポートで「消滅可能性自治体」とあげられた後志の仁木町は、働く場所がければ若い世代の移住が進まないとして、雇用の創出に力を入れてきました。
レポート公表の翌年、2015年には、仁木町はワインの醸造や果物の生産といった産業を大々的にアピールしていく戦略を立てました。
この戦略に基づき、果樹園やワイナリーを巡るイベントを開催し、道内外の多くの人に町の魅力を知ってもらいながら、▼ワインの醸造に興味のある若い世代の移住を進めるため、ワイナリーを誘致して雇用を確保した上で、▼農業を新たに始め、1年が経過した人には50万円を支給したり、▼定住によって家を新築する場合には200万円を補助したりするなど、移住者が定着するための制度を整備してきたということです。
さらに、移住者が結婚後、子育てしやすいように、保育園や児童館を集約した複合施設を設置するなどの取り組みも進めています。
仁木町の林幸治副町長は、「10年前の推計で、消滅する可能性があると指摘されてから、仕事がなければ移住はしてもらえないと考え、町の特産を生かして移住者を呼び込めるよう地道な取り組みを続けてきた。それでも人口減少は続いているので、対策を続ける必要があると考えている」と話していました。
【専門家は】
地域政策に詳しい、北海学園大学の西村宣彦教授は、道内で117の自治体が消滅する可能性があるという今回の分析結果について、「全国的に出生率の低下が続く中、北海道では第1次産業が主体なため働く場所を求めて道外を離れる人も多いやめ、人口減少に歯止めがかからず、厳しい状況が続いていることを示している」と指摘しています。
また、一部の自治体で改善が見られることについて西村教授は、「背景を慎重に見極める必要があるものの、ワインや宇宙産業など地域ならではの産業を育成したり、スタートアップの企業の支援や教育環境の改善が功を奏している。定住、移住を進めるためには若い人が魅力的に思える産業を育成し、働く場を増やす努力が必要だ」と話しています。
そのうえで、人口減少に歯止めをかけるには、「消滅の可能性があるといわば脅して、対策を自治体任せにするのでなく、国のレベルで子育てをしやすい経済、社会的環境を整備し、国と地域が連携して対策を進めていくことが重要だ」と指摘しています。