知床観光船 沈没事故から2年 斜里町で追悼式 犠牲者に祈り

知床半島沖で観光船が沈没し、20人が死亡、6人が行方不明になった事故から23日で2年です。地元の斜里町では乗客の家族などが参列して追悼式を行い、犠牲者に祈りをささげました。

おととしの4月23日、知床半島沖で乗客乗員あわせて26人が乗った観光船が沈没した事故では、20人が死亡、乗客6人の行方が今も分かっていません。
【斜里町役場の献花台】
地元の斜里町役場には事故直後から献花台が設けられていて、事故から2年を迎えた23日も、犠牲者を悼んで花を手向ける人の姿が見られました。
去年に続き、4月23日に献花台を訪れたという町内の40代の女性は「まだ見つかっていない人がいるので、『何か少しでも手がかりが見つかるといいな』という気持ちで献花しました。この日がくると事故のことを思い出して胸が苦しいです」と話していました。
町によりますと、事故以降、町に寄せられた献花は、22日までに2594組にのぼっているということです。
【斜里町ウトロでは追悼式】
事故から2年となる23日、地元の斜里町ウトロで午後1時から町などが主催する追悼式が行われ、乗客・乗員の家族や地元の関係者など合わせておよそ150人が参列しました。
式では、はじめに斜里町の山内浩彰町長が「亡くなられた方々に謹んで哀悼の意を表します。安心して訪れてもらえる魅力的な知床であるために何をすべきか地域全体で繰り返し問い直し、安心・安全を実践していきたい」と述べました。
続いて、参列者全員で黙とうを行い、同時に町内2か所の消防署のサイレンを鳴らして町全体で犠牲者に祈りをささげました。
このあと知床斜里町観光協会の野尻勝規会長が「安全の誓い」を行い、「多くの町民にとってあの事故の記憶は忘れることができないもので、地元の観光事業者にとっても危機管理と安全対策の重要性を改めて思い知らされた。尊い命をなくされた方々の思いを胸に、安全の確保こそが最大の使命であるという決意のもと安全を誓う」と述べました。
そして、式の最後には、参列者が1人ずつ会場の献花台に花を手向け、亡くなった20人を悼むとともに、まだ見つかっていない6人の発見を願って静かに手を合わせていました。
追悼式では、事故を起こした観光船の運航会社、「知床遊覧船」の桂田精一社長の姿は見られませんでした。
一方、会場には、桂田社長が「知床遊覧船代表取締役」として贈った花が置かれていました。
追悼式のあと、斜里町の山内浩彰町長は「2年前の事故を町の歴史に刻み、多くの人たちに知床の自然を体験していただくため、安心・安全をどう提供していくか、考えていきたい」と述べ、安全体制の強化に力を入れていく考えを示しました。
また、式に先だって乗客の家族から「慰霊碑を設置してほしい」と要請を受けたことを明らかにしましたが、設置については「ご家族の皆さんのさまざま気持ちや意見を受け止めながら、これから考えていきたい」と述べるにとどめました。
追悼式の実行委員長を務めた、知床斜里町観光協会の野尻勝規会長は「知床の観光に携わる者として今後も乗客の家族に寄り添っていきたい」と話していました。
そして、知床の観光客の回復が遅れていることについては、「観光業にとっては非常に苦しい2年だったと思う。1人でも多くの人に知床へ足を運んでもらえるよう、積極的な誘客をしていきたい」と話しました。
【追悼式会場には臨時の献花台】
献花台には午前中から地元の人などが訪れていました。
事故後に遺族が利用した宿泊施設の元従業員の杉浦登市さんは、「亡くなられた方のご冥福を祈るとともにご家族の気持ちが安らぐようにという思いで手を合わせました。犠牲になられた方のご家族に寄り添わなければ知床の観光は戻ってこないと思う」と話していました。
事故のあとボランティアで行方不明者の捜索に協力した羅臼町の漁業者、桜井憲ニさんは、献花台に花を手向け、手を合わせました。
桜井さんは「亡くなった方のご冥福を祈るために来ました。事故でひどい目に遭って、辛く苦しかっただろうなと思います。見つかっていない6人を見つけてあげることができなくてとても残念で、家族の気持ちを考えると辛いです」と話していました。
【事故の観光船の保管場所で犠牲者の家族 花手向ける】
沈没事故を起こした観光船が置かれている網走市内の保管場所では犠牲者の家族が訪れて、花を手向けました。
訪れたのは3組の家族で、斜里町ウトロで開かれた追悼式のあと、車で移動してきました。
家族は担当者の案内で、保管庫の中に入って船体を確認し、臨時で設けられた献花台に花を手向けたということです。
【事故が起きたとみられる時刻にサイレン】
斜里町では、事故が起きたとみられる午後1時すぎに、町内2か所の消防署のサイレンが鳴らされました。
斜里町役場では、これまで町に寄せられた献花の手入れや、乗客の家族の受け入れなどにあたってきた職員がこのサイレンを聞き、役場に設けられている献花台の前で黙とうし、祈りささげてていました。
献花の手入れをしてきた職員の女性は「海が冷たい時期に事故にあったということで職員も忘れることはない。乗客のご家族にとって、大切な方を亡くされたという気持ちは、時がたっても変わらないと思う」と話していました。
【1管は業務上過失致死の疑いで捜査継続】
第1管区海上保安本部は、運航管理者だった運航会社の桂田社長から任意で事情を聞くなどして、業務上過失致死の疑いで捜査を続けています。