知床観光船 沈没事故から2年 来月にも提訴へ乗客家族の思い

知床半島沖で観光船が沈没した事故で、乗客の家族30人が運航会社側に対して賠償を求める訴えを来月下旬にも札幌地方裁判所に起こすことになりました。提訴という決断をした乗客の家族の思い。
行方不明者の家族の中には、裁判に参加するため家族の死亡の認定を受けることを余儀なくされた人もいます。

いまも家族2人が行方不明になっている十勝地方の51歳の男性は、元妻と当時小学2年生だった息子が観光船に乗船していて、事故から2年がたったいまも行方が分からないままになっています。
こうした中、乗客の家族30人が運航会社側に対して賠償を求める訴えを来月下旬にも札幌地方裁判所に起こすのを前に、男性はことし2月、戸籍法の規定に基づいて息子の死亡の認定を受ける手続きをとったということです。
裁判では死亡したことによる損害についての賠償を求めるため、男性が裁判に参加するために必要な手続きだったということで、およそ2か月間、悩んだ末に決断したということです。
男性は「生存の可能性が厳しいということも分かっているが、どうしても今は受け入れられないので、認定死亡の申請には葛藤があった。ただ、法廷の場で運航会社の桂田社長に直接質問したいことや、言いたいことがあったので、裁判に参加することにした」と決断した理由を語りました。
その上で、「責任をとらなければならない人たちもまだ誰1人として責任をとっていない状態だ。事故が起きてから家族が今までどんなに苦しい思いをしてきたのかを伝えたい。公の場で桂田社長が何を思い、何と答えるのかを聞きたい」と語りました。
行方不明になっている息子は去年、通っていた小学校の配慮で、3年生に進級しましたが、死亡の認定を受けたことしは、4年生には進級できなかったということです。
一方、男性は学校側から「いつも戻ってきてもいいような体制は作っておく」と伝えられたということで、「学校側の配慮は大変ありがたかった。書類上では認定死亡という形をとったが、2人を待ち続けているという気持ちは変わっていません」と話していました。