川でのサケ漁めぐるアイヌ先住権訴訟 札幌地裁 訴え退ける

十勝の浦幌町にあるアイヌの団体が川でサケを取ることは先住民の権利、先住権によって認められるとして法律などで規制されないことの確認を求めて4年前、全国で初めて起こした裁判で、札幌地方裁判所は18日、訴えを退ける判決を言い渡しました。

漁業権を持たずに川でサケ漁を行うことは水産資源保護法などで禁じられていますが、浦幌町のアイヌの団体「ラポロアイヌネイション」は先住権によって認められるとして、国や道に対し、浦幌十勝川の河口から4キロの間では法律などで規制されないことの確認を求めています。
これまでの裁判で原告は、「サケを取る権利は数百年以上前からのアイヌの伝統や慣習によって確立された先住権で、国際的にも固有の権利とされている」などと主張していました。
一方、被告の国と道は「水産資源としてのサケを保護するため川での捕獲は法律などで原則禁止されており、原告の主張には法的な根拠がない」などとして、訴えを退けるよう求めていました。
18日の判決で札幌地裁の中野琢郎裁判長は「アイヌの人々は遅くとも江戸時代以降、サケ漁をしており、サケ漁がアイヌの生活、伝統、文化などと密接に関わるものと認められる」と指摘しました。
その上で、「そうした歴史的背景を踏まえたとしても河川は公共のものであることに加えてサケは河川に遡上して産卵するという特性をもった天然の水産資源であることを鑑みると特定の集団が排他的に漁業を営む権利を有すると認めるのは困難だ」などとして原告の訴えを退ける判決を言い渡しました。
【原告側「判決は不服」控訴する方針】
裁判のあと、原告側は記者会見を開き、控訴する方針を示しました。
原告の団体「ラポロアイヌネイション」の差間啓全さんは叔父で長く団体の代表を務めことし2月に亡くなった正樹さんの遺影を前に、「率直に言って、この判決は不服に思います。これからも裁判は続きますが、こんな判決で私たちの気持ちが覆ることはありません」と話し控訴する方針を示しました。
そして控訴に向けて「正樹さんの意思を引き継ぐには気持ちだけでもつなぎとめていきたい」と話していました。