【北のそなえ術】巨大地震の津波を映像化 釧路・苫小牧・函館

防災や減災についてお伝えする「北のそなえ術」のコーナーです。
今月から月2回程度お伝えしていきます。
今回は、巨大地震による津波について、下京翔一朗記者が解説します。
【あなたのまちを襲う津波をCG化】
NHKでは、先月、東日本大震災から13年となったのに合わせて、千島海溝と日本海溝沿いの巨大地震による太平洋沿岸の津波について、道が3年前に公表した想定に基づいて、CGで映像化しました。
津波をCGで映像化したのは、釧路市、苫小牧市、函館市です。
詳しく見ていきます。
【津波CG・釧路市】
まず、16万人近くが暮らす、道東の釧路市のCGです。
千島海溝で発生する地震では、津波は30分ほどで沿岸に到達します。
高さは中心部でおよそ7メートル。
海岸から4キロ離れた、隣町の釧路町のショッピングモールにも押し寄せます。
釧路市の死者は、最大で人口の半分以上の8万4000人になると想定されています。
【津波CG・苫小牧市】
続いて、苫小牧市のCGです。
道内の工業や物流の拠点都市です。
日本海溝で発生する地震では、8メートルを超える津波が40分ほどで到達。
沿岸を走る国道や線路を飲み込み、市役所や住宅が集まる中心部に押し寄せます。
津波は製油所や工場がある港湾エリアにも。
苫小牧市では最大で4万人の死者が想定されています。
【津波CG・函館市】
最後は函館市のCGです。
ここでは津波が特徴的な動きを見せます。
日本海溝で発生する地震では、およそ45分後、東側から津波が押し寄せます。
15分後には西側からも。
津波が函館湾を回り込み、押し寄せるためです。
津波は、函館駅や観光地などが集まる市の中心部へ。
函館市では、死者は最大で2万9000人と想定されています。
CGで見ると、津波は沿岸部だけでなく、市の広い範囲に及ぶとみられています。
【津波の動きや高さを地図で表示】
道の想定をもとに津波の動きや高さを表した地図でみてみます。
まず、釧路市では、津波が30分ほどで海岸に到達し、その後、川を遡上して、海岸から10キロを超える場所にまで及びます。
浸水面積はおよそ9000ヘクタール。
死者は最大で8万4000人、道内の自治体では最も大きいものとなります。
また、建物の被害は2万7000棟に及びます。
苫小牧市では、津波は40分ほどで海岸に到達し、住宅が集まる中心部を広い範囲で飲み込みます。
浸水面積は道内の自治体で最も大きい、およそ1万ヘクタール。
死者は最大で4万人、建物の被害は1万3000棟に及びます。
市内に集まる工業や物流関係の施設にも大きな被害が出るとみられていて、その経済的な影響は道内に限らず、全国的なものとなるおそれもあります。
函館市の場合は、CGでも見たように、まず、東側から津波が押し寄せます。
このあと、函館湾に入り込んだ津波が西側から押し寄せます。
函館では、こうした現象が何度も繰り返されます。
浸水面積はおよそ2600ヘクタール。
死者は最大で2万9000人、建物の被害は4万8000棟に及びます。
函館市は観光地が多く、災害時、多くの観光客が訪れている可能性もあり、地元の住民だけではなく、観光客の安全確保も大きな課題です。
【沿岸地域では大きな被害を想定】
道の被害想定では、太平洋側の市や町で、死者の数は、最大で14万9000人に上るとされています。
ただし、早めの避難や、津波避難ビルといった施設の整備などを進めれば、死者数は3分の1の4万1000人になると想定されています。
津波による被害を防ぐためには、私たちの防災意識、特に迅速な避難を徹底するという意識が大切であることが、改めて分かります。
私が以前、取材した、東日本大震災の被災地、岩手県釜石市には、震災後に建てられた石碑があります。
そこには、地元の中学生が考えた、「100回逃げて、100回来なくても、101回目も必ず逃げて」ということばが刻まれています。
震災の教訓として、北海道で暮らす私たちも、胸に刻む必要があると思います。
自宅や学校、職場周辺のハザードマップを参考にして、避難所や高台の場所を確認したり、家族と災害時の行動について、今いちど、話し合ったりしてほしいと思います。