地価上昇 富良野 ニセコエリアでは“異変”も

【Rapidus工場建設進む千歳市では】
先端半導体の国産化を目指す「Rapidus」の工場建設が進む千歳市では、工事の作業員や関連企業の従業員などの需要を見込んだマンションの建設が相次いでいます。
このうち、千歳市内でマンションの建設を手がける不動産会社では、「Rapidus」が千歳市への進出を表明した去年2月以降、3棟のマンションの建設を進めています。
マンションはことし7月以降に順次完成する予定で、すでに企業から多くの問い合わせが寄せられているということです。
この不動産会社では、千歳市内の住宅需要はさらに増加すると見込んでいることから、今後、さらに7棟のマンションの建設を計画しているほか、オフィスビルやホテルなどの開発も検討しているということです。
不動産会社「アトラスグループ」の栗栖健課長は「Rapidusの工場が本格稼働すると、さらに千歳市内に人が流入してくると考えている。しっかりとした需要が見込めるため、千歳の不動産への期待は大きい」と話しています。
【住宅地上昇率 全国1位の富良野市では】
ことしの地価公示で住宅地の上昇率が全国1位となった「富良野市北の峰町」では、海外資本によるコンドミニアムの建設が相次いでいます。
富良野市にあるスキー場はパウダースノーが国内外のスキーヤーから高い人気を集めていて、ふもとにある北の峰町とその周辺では、国内有数のスキーリゾート・ニセコエリアで開発を手がけてきた企業が、相次いでコンドミニアムや別荘を開発しています。
ニセコエリアに比べて富良野は土地の価格が安いため、このところの円安も追い風となって、海外の富裕層からは割安感がある投資先として注目されています。
アジアを中心に海外の投資家を顧客に持つ不動産会社「日本信達」では、スキー場の近くのおよそ1000平方メートルの土地に6階建てのコンドミニアムの開発を計画していて、石井秀幸社長は「海外の投資家から富良野に投資したいという問い合わせが急増している。問い合わせは、急上昇というより直角に上がるような感じで増えている」と話しています。
一方で、「Rapidus」の工場建設などに伴って道内では建設作業員の人手不足に拍車がかかっているということで、「開発計画を延期するのか、中止するのか、判断を問われている状況だ」と話しています。
【地価上昇の一方で“異変”が 計画の延期や変更など相次ぐ】
先端半導体の国産化を目指す「Rapidus」の工場建設などに伴って地価が上昇する一方、北海道内ではある“異変”が生じています。
資材価格の上昇に加えて、「Rapidus」の工場建設で建設業界の人手不足に拍車がかかり、道内の開発計画では延期や変更、中止を迫られるケースが相次いでいます。
このうち、札幌駅前にあった商業施設「エスタ」の跡地とその隣接する地区には、延伸を予定している北海道新幹線の札幌駅に直結する道内で最も高いビルの建設が計画されていて、今年度中の着工が予定されていました。
しかし、JR北海道は先月、資材価格や人件費の高騰により、当初2500億円程度と想定した事業費が増加する見通しとなり、計画の見直しを進めていることを明らかにしました。
ビルの完成時期も当初予定していた2028年度から遅れる可能性があるとしていて、建設コストの圧縮に向けた規模の縮小について設計と施工を担当する清水建設と協議を続けているとしています。
こうした“異変”は、国内有数のスキーリゾートで富裕層向けの高級ホテルやコンドミニアム、それに別荘の開発が盛んなニセコエリアでも相次いでいます。
スキー場のすぐそばで計画されているコンドミニアムは、当初は2026年度に開業する予定でしたが、2年遅れて2028年度になることが先月、明らかになりました。
このコンドミニアムは、「星野リゾート」がニセコエリアで運営に参入するとあって注目を集めていますが、建設資材の高騰に加えて人手不足により、想定していた工期での建設が難しくなったためだとしています。
コンドミニアムの開発を手がける「Zekkeiグループ」の石丸修太郎社長は「Rapidusの進出前から建設業界は人が足りないという話はあったが、進出が決まったあと輪をかけて人手不足が深刻化した。いままで経験したことがない影響を受けており、人手不足を乗り越えてしっかりとビジネスを組み立てていかなければならない」と話しています。
【不動産鑑定士「地価上昇に“Rapidus効果大”」】
北海道不動産鑑定士協会の横山幹人理事は「地価の上昇にRapidusの影響は非常に大きく、千歳市にとどまらず周辺の恵庭市や苫小牧市、それに小樽市まで広く、住む場所の確保やホテル需要といった“Rapidus効果”が感じられた。北海道新幹線の延伸に伴う札幌市中心部の再開発などもあり、道内全体の地価の上昇基調は今後も続くと思われる」と話しています。