国交省 JR北海道に経営改善求める監督命令 支援を実施

国土交通省は厳しい経営が続くJR北海道に対し、15日、法律に基づく「監督命令」を出し、経営改善に向けた取り組みを進めることを求めました。新年度・2024年度からの3年間であわせて1000億円あまりの支援を行うとしています。

15日は、国土交通省の村田茂樹鉄道局長がJR北海道の綿貫泰之社長を呼びJR会社法に基づく「監督命令」を出しました。
国土交通省は、JR北海道に対し2018年にも「監督命令」を出して経営改善に向けた取り組みを進めるよう求め、財政的な支援も行ってきましたが、経営は改善しませんでした。
今回、国は改めて「監督命令」を出し、経営改善に向けた取り組みをより一層進めることを求めるとともに、支援の実施を決めた形です。
具体的にはJR北海道の新しい中期経営計画が始まる新年度からの3年間で、▽青函トンネルの修繕費用や▽メンテナンス設備の自動化といった設備投資などのため、あわせて1092億円を支援するとしています。
また、JR北海道が「単独では維持することが困難」とする8つの区間については、2026年度末までに区間ごとに事業の抜本的な改善策を確実に取りまとめることを求めています。
JR北海道の綿貫社長は「監督命令を重く受け止め、不退転の決意で経営改善に取り組んでいきたい」と述べた上で、「単独では維持することが困難」とする8つの区間について、「次の3年間が課題解決の最後の機会ととらえて、持続可能な交通サービスの仕組み作りに取り組んでいきたい」と述べました。

【JRの経営改善なお不透明】
JR北海道の経営状況は、国からの「監督命令」に伴って財政的な支援が2019年度から始まったにもかかわらず、思うように改善していません。
大きな要因が新型コロナウイルスの感染拡大です。
鉄道だけでなく小売りやホテルなどの利用者も減ったことで、グループ全体の経常損益は、▽2019年度は135億円の赤字でしたが、▽2020年度には446億円と過去最大の赤字となりました。
▽今年度・2023年度は217億円の赤字の見通しを示していて、現在の中期経営計画の目標値、68億円の赤字とはかい離がある状況です。
JR北海道は経営改善に向けて、▽鉄道事業ではインバウンドなど観光需要の取り込みにいっそう力を入れるほか、▽鉄道以外の事業ではホテルやオフィス、商業施設といった不動産開発などを強化したいとしています。
ただ、コロナ禍を経て出張が減ったことなどから、鉄道の利用者はコロナ禍前の水準には戻らないと見込まれている上、燃料価格や資材価格の上昇も打撃を与えていて、経営の改善が進むかは不透明な状況が続いています。
【経済担当の波多野新吾記者の目】
改めて国から監督命令を受けたJR北海道。
前回の監督命令のあと、経営改善を進められなかったことで、今回、いわば“延長戦”に突入することになりました。
なかでも大きな課題として突きつけられたのは、JR北海道が「単独では維持することが困難」としている8つの区間です。
コロナ禍で思うように進まなかった道や沿線自治体との費用負担の協議を、今度こそ、確実に進めることが不可欠です。
直面する課題に対して、“延長戦”の3年間で答えを出すことができるのか、解決に向けたJR北海道の実行力が問われています。