能登半島地震2か月 各地で訓練や学習 命を守るためには

能登半島地震から来月1日で2か月となります。今回の地震では、6年前の胆振東部地震以来となる震度7の揺れを観測したほか、東日本大震災以来となる大津波警報も発表され、津波による被害が出ました。地震から2か月を前に、27日、道内各地では、津波を想定した避難訓練などが行われました。
【苫小牧市の港では津波避難訓練】
このうち苫小牧市では、冬場に大津波警報が出たことを想定し、港で働く作業員が避難ビルまで逃げるのにどの程度の時間がかかるのかを確認する訓練が行われました。
訓練は、港の管理組合が苫小牧西港で初めて行い、6つの企業からあわせて12人が参加しました。
参加者は、大津波警報が出たという想定で、避難ビルまで600メートルから2キロほど離れた4か所の地点から、雪が残る道を通って、徒歩と車の2つの方法で避難しました。
そして、安全が確保される避難ビルの4階に上がるまでの時間を計測しました。
日本海溝と千島海溝沿いの巨大地震で、道は早ければ40分で苫小牧市に津波の第1波が到達すると想定しています。
訓練では、地震の発生から12分後に避難を開始して、最も遠い場所からの徒歩の移動には22分かかり、34分以内に避難を終えました。
訓練に参加した40代の男性は、「寒さや風もあり避難は結構大変だった。実際に歩いてみることでわかったこともあったので、貴重な経験になった」と話していました。
苫小牧港管理組合の京野勇一業務経営課長は、「道の津波の想定も意識しながら、備えていく必要があるので、訓練を企画した。雪があるときの歩きづらさなど冬ならではの課題もあり、安全に注意しながら避難したい」と振り返っていました。

【函館の小学校では津波から身を守る行動学ぶ】
津波で浸水が想定される区域にある函館市の小学校で、地域の住民が参加して子どもたちと一緒に津波から身を守る行動について学びました。
この授業は函館市立えさん小学校が、いざというときに児童と住民が協力して避難できるよう、地域のお年寄りなどに呼びかけて行いました。
始めに子どもたちが事前に作った防災マップを使って、学校の周辺では津波によって5メートル以上の浸水が想定されていることや避難所が複数あることなどを確認し、いざというときにどこに逃げればいいのか、話し合っていました。
この後、児童と住民は、防災をテーマにしたカルタを行い、笑顔を見せながら交流を楽しんでいました。
道が公表している被害想定では、海溝型の巨大地震で津波による死者数が函館市でおよそ3万人と推計されている一方、迅速に避難すれば1割以下まで減らすことができるとされています。
6年生の男子児童は「津波は高いほど早いからすぐに逃げるようにしたい」と話し、5年生の女子児童は「すぐに避難できるよう防災グッズをひとまとめにして備えたい」と話していました。
また、60代の女性は、「何かあったら子どもたちとみんなですぐに避難します」と話していました。
【豊頃町では避難所の運営方法学ぶ訓練】
能登半島地震からまもなく2か月になるのを前に、十勝の豊頃町で大地震による津波などの災害時に設置する避難所の運営方法を学ぶ訓練が行われました。
この訓練は、千島海溝沿いの巨大地震などの災害が起きた際に、避難者をスムーズに受け入れられるよう町が毎年この時期に行っていて、27日は町の職員およそ20人が参加しました。
町のコミュニティーセンターを会場に行われた訓練では、大人4人ほどが入れる簡易テントの組み立て方を学び、職員たちが作業に取り組みました。
そして、避難所を訪れた避難者を被災状況などに応じて収容する部屋を分けていく「ゾーニング」の訓練では、避難者役の職員がペット同伴や障害があるなどの事情を抱えた設定で次々と訪れ、担当職員が体調や住宅の被災状況などを聞き取りながら、部屋を案内していきました。
道の想定によりますと、千島海溝沿いの巨大地震で、豊頃町では最大22メートルの津波が予想され、いかに迅速に避難するかが課題になっています。
豊頃町総務課危機対策係の木幡健太係長は「若い職員も増えてきたので、どんな状況でもスムーズな避難所運営ができるように、体で覚えていってほしい」と話していました。
【千島海溝・日本海溝 巨大地震・津波発生時の道の被害想定】
北海道沖から岩手県沖にかけての千島海溝と日本海溝では、過去にマグニチュード7から9クラスの地震が繰り返し起き、最大クラスの巨大地震の発生が切迫していると考えられていて、道はおととし、太平洋沿岸部の38の市と町を対象に、巨大地震と津波が発生した場合の被害の想定をまとめて公表しています。
それによりますと、千島海溝沿いでマグニチュード9.3の巨大地震が発生した場合、最大で26.5メートルの津波が押し寄せ、死者は最大で10万6000人にのぼると推計しています。
また、日本海溝沿いでマグニチュード9.1の巨大地震が発生した場合は、最大で16.3メートルの津波が押し寄せ、死者は最大で14万9000人にのぼると推計しています。
最大の死者の数は、冬の夕方の時間帯に、早めに避難する人の割合が低く、避難ビルなどが活用されなかった場合を想定していて、早めの避難が進められた場合の死者は、千島海溝沿いの巨大地震と津波では54.7%減って4万8000人に、日本海溝沿いの巨大地震と津波では72.5%減って4万1000人になると推計しています。
道危機対策課の太田逸平主幹は、「沿岸部の人は強い揺れを感じたり、津波警報が出されたりしたときはすぐに逃げてほしい」としたうえで、「市町村で作成しているハザードマップを事前に確認するほか、避難場所や避難ルート、避難するときに持ち出す物を家族で確認してもらい、災害に備えてほしい」と話しています。