相次ぐ被害を受け環境省がクマを指定管理鳥獣に追加へ

全国でクマによる被害が相次ぐ中、環境省が設置した検討会は、ヒグマやツキノワグマを指定管理鳥獣に追加した上で、国が捕獲や調査を支援すべきだと提言しました。これを受けて環境省は今後、指定管理鳥獣に追加するための省令改正の手続きを行い、4月中に施行する方針です。

道内や東北などではクマによる人身被害が相次ぎ、今年度は先月までの死傷者が全国で200人余りと過去最悪のペースで増えています。
北海道をはじめとする各地の自治体から要望を受けた環境省が去年、専門家による検討会を設け、対策について議論を進めた結果、8日、検討会は今後の対策方針を提言しました。
それによりますと道内に生息するヒグマや本州のツキノワグマについて一部の地域を除き指定管理鳥獣に追加し、自治体による捕獲や調査などの管理を国が支援する必要があるとしています。
その上でクマはすでに指定管理鳥獣となっているエゾシカを含むニホンジカやイノシシと比べて繁殖力が弱いため、生息分布や個体数などのモニタリングを定期的に実施し、捕獲する際も過度なものにならないよう限定的に行う必要があるとしています。
また人とクマの空間的なすみ分けを図るため、これまで対策の基本とされた人の生活圏に侵入したクマなどを排除することに加え、人とクマの生息域の間に木を伐採するなどの環境整備や個体数管理を強化した「緩衝地帯」を作り、人の生活圏への侵入を防ぐべきだと指摘しています。
これらの提言を受けて伊藤環境大臣は8日、「必要な対策を速やかに実行する」などとしてヒグマやツキノワグマを指定管理鳥獣にすると表明しました。
環境省は今後、四国地方を除いて指定管理鳥獣に追加するための省令改正の手続きを行い、例年、クマが冬眠から覚めるとされる4月中に施行する方針です。
【検討会メンバー座長は】
検討会の座長を務めた東京農業大学の山崎晃司教授は「クマ被害の対策には人も資金も必要で、指定管理鳥獣の交付金を有効に使うことができれば
都道府県を支援する大きなツールになる。交付金を生息状況などのモニタリングや人材育成、環境整備などに柔軟に活用できるようにして、人とクマ、双方が安心して生活できるようにすることが必要だ」と話していました。
【鈴木知事は】
鈴木知事は記者団に対し「クマが市街地に出没する状況や数が多くなっていて、北海道や東北では強い危機感の中で、それぞれ独自の取り組みを進めている。今回、具体的な支援の内容は示されていないが、地域の実情を踏まえた取り組みになるよう東北各県とも連携して国に求めていきたい」
と述べました。
また「クマの駆除については全国から苦情が寄せられ、ハンターの活動に
支障をきたす懸念もある。道民には対策を実行していく必要性を十分に理解してほしい」と述べました。
【専門家は】
ヒグマの指定管理鳥獣への追加が決まったことについて、クマ研究の第一人者で北海道大学大学院獣医学研究院の坪田敏男教授は「これまで道などの自治体が主体だった管理計画の中には、費用や人手がネックとなり進んでいない対策も多くあった。指定管理鳥獣に追加されることで国の交付金を使ってゾーニング対策などが効果的に行われることが期待できる」と評価しています。
一方で、捕獲のあり方については、「シカやイノシシのように頭数を減らす対策をとると、ヒグマはあっという間に数を減らしてしまう。市街地に出没する個体だけを減らせるよう、今回、検討会が示した方針に沿って地域の自治体がきちんと対策をとれるかがカギになるだろう」と話しています。
その上で、坪田教授は「国からの支援をきっかけに、市街地での捕獲などの対策について市民の理解がいっそう進むことも期待したい」と話していました。