「北方領土の日」 各地で早期返還求める動き

2月7日は、1855年2月7日に日本とロシアの間で北方四島を日本の領土とする条約が結ばれたことにちなんで、返還運動を全国的に盛り上げようと日本政府が定めた、「北方領土の日」です。

【羅臼町では元島民が朝日に向かい早期返還訴え】
道東の羅臼町では7日、元島民らが集まり、午前6時半の日の出の時刻にあわせて朝日が昇る国後島の方角を向き、「北方領土を返せ!」、「北方墓参を早期に再開しよう!」などとシュプレヒコールをあげ、朝日に向かって早期返還を訴えました。

【根室市では返還求める住民大会】
北方四島の元島民が多く住む根室市では、早期返還を求める住民大会が開かれ、元島民のほか、その子どもや孫などおよそ750人が集まりました。
この中で、元島民を代表して択捉島出身の鈴木咲子さん(85)が「ロシアによるウクライナ侵攻で北方領土をめぐる日露間の交渉が途絶え本当に不安が募るばかりだ。返還への道筋をつける揺るぎない外交交渉を強く求める」と訴えました。
そして、返還運動に取り組んでいる根室市の高校3年生の半田つくしさんが「元島民の熱い思いを私たち若い世代が引き継ぎ、全国の同世代に訴えなければならない」と決意表明しました。
大会の最後には参加者全員で「北方領土を返せ」などとシュプレヒコールをあげました。
北方領土問題をめぐって、ロシアはウクライナへの軍事侵攻に対する日本政府の制裁措置に反発し、平和条約交渉を中断すると一方的に表明したほか、元島民らによる「ビザなし交流」や先祖の墓を訪れる「北方墓参」などの事業も再開の見通しは立っていません。
住民大会に出席した千島歯舞諸島居住者連盟の角鹿泰司根室支部長(86)は「元島民にはもう時間がない。領土の土を踏み、墓参ができなければ死ぬことはできない」と話していました。

【署名活動に根室地方の高校生が初めて参加】
根室市で住民大会とともに行われた返還を求める署名活動には、根室地方の高校生が初めて参加しました。
返還運動の後継者育成に取り組んでいる根室振興局の呼びかけで根室高校と羅臼高校からあわせて3人の生徒が会場にかけつけました。
生徒たちは、会場を訪れた人たちに次々に声をかけ、北方領土についてのパンフレットやティッシュを配って署名活動への協力を呼びかけていました。
北方領土の元島民の平均年齢は88歳を超え一段と高齢化が進んでいることから、返還運動を担う、若い世代の育成が重要になっています。
元島民4世の根室高校の女子生徒は「自分は北方領土問題について真剣に考えているほうだと思うが、きょうのような日に活動に参加できてよかった」と話していました。
また、羅臼高校の男子生徒は「いま、四島の返還は遠い状況だが、ほかの学生にも興味を持ってもらえれば返還は近づくと思う」と話していました。

【さっぽろ雪まつり会場でも署名活動】
「さっぽろ雪まつり」の会場でも鈴木知事らが署名活動を行いました。
署名活動は「さっぽろ雪まつり」のメイン会場となっている札幌市の大通公園で行われました。
鈴木知事が通りかかった人たちに協力を呼びかけると、市民や観光客が次々に署名していました。
このあと北方領土の早期返還を求める集会が開かれ、鈴木知事は「元島民の平均年齢は88歳となり、解決は一刻の猶予も許されない。道としても1日も早い返還の実現に向けて元島民や関係者と思いをひとつに全力で取り組んでいく」と述べました。
北方領土復帰期成同盟の佐伯浩会長が「北方四島の早期返還を目指し、啓発や署名活動を通じて世論の喚起に努め、政府の外交交渉を支えていきます」と決意を述べました。

【東京では返還求める全国大会】
東京では返還を求める全国大会が開かれました。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、岸田総理大臣は「戦後78年が経過した今もなお、北方領土問題が解決されず、平和条約が締結されていないことは誠に遺憾だ。ロシアによるウクライナ侵略によって日ロ関係は厳しい状況にあるが、政府として領土問題を解決し、平和条約を締結するという方針を堅持していく」と述べました。
その上で、北方領土の元島民らによる墓参などの交流事業の再開について「日ロ関係における最優先事項の1つだ。高齢となられた元島民の切実なる気持ちに何とか応えたいとの強い思いをもって、ロシア側に求めていく」と述べ領土問題の解決と平和条約を締結する政府の方針を堅持し、交流事業の再開に取り組む考えを強調しました。
大会では、北方領土問題が国際情勢の影響を受けて非常に厳しい状況におかれているとして、現状を「不法占拠」と指摘し、官民一体で四島の返還実現を求めるアピールを採択しました。

【ロシア「好ましからざる団体」に指定と発表】
北方領土をめぐっては、ロシア法務省が6日、返還運動を続ける日本の団体を、ロシアでの活動を事実上禁止する「好ましからざる団体」に指定したと発表しました。
札幌市に事務局を置く「北方領土復帰期成同盟」がこれに指定された可能性があります。
「北方領土復帰期成同盟」の佐伯浩会長は札幌市内で報道各社の取材に応じ、「細かい理由を言わずに相手の国を非難するロシア政府のいつものやり方で相手の国や国民への尊敬や思いやりの心が感じられない」と反発しました。
これをめぐり、日本政府が外交ルートを通じて抗議したことを踏まえ、期成同盟では、今後のロシア側の出方を注視することにしていて、佐伯会長は北方領土の返還に向けた今後の交渉に影響はないという見方を示しました。
また、元島民の国後島出身の脇紀美夫さんは「ロシアの一方的な話であってわれわれは一喜一憂する必要はないと思っている。元島民として願うこと、取り組むことは変わらない」と冷静に受け止めていました。
また母親が国後島出身の大森桂子さんは「日本とは考え方の違う国なのでいっしょくたには考えられないが、祖先が生まれ育った島なので返還を願う思いはこれからも変わらない」と話していました。