能登半島地震1か月 11市が寒さ対策見直し検討 NHK取材

震度7の揺れを観測した能登半島地震から、来月1日で1か月となります。
NHKが、道内の35の市に取材したところ11の市が、地震を受けて、避難所での寒さ対策の見直しを検討していると答えました。専門家は、寒さに強い施設がどこか改めて検討するなど、避難所の指定そのものを含めた根本的な見直しが求められると指摘しています。

今月1日の能登半島地震で、石川県内ではこれまでに236人の死亡が確認され、19人の安否がわかっておらず、28日の時点で1万4544人が避難生活を余儀なくされています。
地震の発生から来月1日で1か月となるのに合わせて、NHKは、道内の35の市に、地震を想定した防災対策の現状について取材しました。
その結果、能登半島地震でも課題となっている避難所での寒さ対策について、すべての市が、6年前の胆振東部地震で道内全域が停電となったことなどを受けて、同様のケースが冬の時期に起きた場合に備えて、▼電気がなくても動かせるストーブの導入や、▼毛布やマットの備蓄の数を増やすなど、すでに対策に取り組んでいると答えました。
その上で、全体の30%あまりにあたる11の市が、今回の地震を受けて、ストーブや毛布といった防寒に役立つ備品をさらに増やすなど、避難所での寒さ対策の見直しを検討していると答えました。
その理由について、各市の担当者からは、▼能登半島地震の避難所で寒さを訴える人の声を聞き、大きな避難所でストーブを使う場合に施設全体が温まるかどうか不安が残ったとか、▼避難する人が想定より多くなった場合、現在の寒さ対策では不十分ではないかと感じたといった声が聞かれました。
災害時の避難者支援に詳しい東北学院大学の定池祐季准教授は、「各自治体が、冬に起こった能登半島地震を目の当たりにして、対策が足りないと感じて足元を見直そうとしているのは大切なことだと思う。現在の避難所を前提に検討するのではなく、寒さに強い施設がどこかを改めて検討するなど、避難所の指定そのものを含めた根本的な見直しが求められる」と指摘しています。
【生活用水・停電対策の見直し検討の市も】
NHKが取材した道内の35の市の中には、能登半島地震で課題となった「生活用水の確保」や、「停電対策」についての見直しを検討するとした市もありました。
今回の能登半島地震で、石川県によりますと、県内では一時、およそ8万戸で断水していましたが、災害直後は道路が通行できず給水車が活用できないなどの影響で、トイレや洗濯などで用いる生活用水の確保の難しさが浮き彫りとなりました。
避難所の備蓄の見直しについて、道内の35の市に尋ねたところ、7つの市が見直しを検討していると回答しました。
各市の担当者からは、▼飲料水としての水は備蓄しているが、住民が暮らす上で大量に必要となる生活用水の確保の重要性を改めて認識したので、具体的な対応を考えたいとか、▼井戸水の活用など、地域が孤立しても自力で生活用水を確保できる環境にあるかどうか、確認したいといった声が聞かれました。
また、今回の地震で、石川県内では一時、およそ3万戸が停電し、避難先で暖房が稼働できなくなるなど、寒さが厳しい時期での停電対策も課題となりました。
避難所の停電対策の見直しについて、道内35の市に尋ねたところ、6つの市が見直しを検討していると回答しました。
各市の担当者からは、▼避難所にある非常用電源の設置状況や、稼働できる期間をいま一度確認したいとか、▼避難所の収容スペースが十分ではないため持ち運び式の発電機を市役所で保管しているが、地域が孤立すると現地に輸送できないので、保管場所の見直しを検討したいといった声が聞かれました。
今回、備蓄や停電対策の見直しを現時点では検討していないと答えた市からも、能登半島地震の課題が国で検討や整理され次第、検討していきたいという回答が複数ありました。
【広域避難 具体的な計画の策定は途上】
能登半島地震で、石川県は、災害関連死を防ぐとともに、当面の落ち着いた生活環境を確保するため、住民に、被災地以外の避難所に移ってもらう「2次避難」を進めています。
NHKでは、道内の35の市に、この2次避難に関する取り組みの現状についても取材しました。
その結果、▼小樽市や千歳市などでは、民間の宿泊施設と協定を結ぶなどして、住民の2次避難先を確保していた一方、▼市内に民間の宿泊施設がないことから、2次避難先の確保を検討しなければならないと回答した市もありました。
また、別の自治体に避難するいわゆる「広域避難」について、▼35の市すべてが道も含めて災害時の応援協定を結び、避難者のための施設を互いに提供することなどを取り決めているほか、▼多くの市で、近隣の市町村などと同様の協定を結んでいることが分かりました。
一方で、▼どのような住民を避難の対象とするかや、▼避難先への移動手段、▼避難の時期などについて、ほとんどの市が、「具体的な計画の策定には至っていない」と答えました。
その理由について、各市の担当者からは、▼実際に地震が起きた場合、どのくらいの被害でどれだけの住民を避難させるのかなど、ケースごとに想定するのが難しいとか、▼地震に加えて、水害や豪雪といったほかの災害などに備える計画の策定に追われていて、ほかの自治体との調整が必要な広域避難まで手が回らないといった声が聞かれました。
東北学院大学の定池祐季准教授は、「2000年の有珠山の噴火や2011年の東日本大震災など、広域避難が行われたケースは過去に数多くあるので、当時の自治体が何に苦労したのかを振り返って検討し、求められる対応を1つ1つ抽出していくことが求められる。自治体が単独で行うのは難しいと思うので、道が平時の段階から、各自治体をサポートしていくことが、スムーズな避難を実現するためには必要だ」と話しています。