【滞在記】剣道に 絶品ほうれん草 壮瞥町の知られざる文化

地域にディープな人脈をもつローカルフレンズのもとに、ディレクターが1か月滞在する「ローカルフレンズ滞在記」。12月は洞爺湖に面した壮瞥町が舞台です。

洞爺湖から東へ10分。
およそ350人が暮らす、壮瞥町の久保内地区は知る人ぞ知る剣豪の里。
道場には13人の小学生が在籍し、日々、練習に励んでいるそう。
久保内地区のこの剣道場は、昭和30年代に青少年の非行防止と健全育成を目的に始まりました。
その後、個人・団体共に、全国のトップを狙うまでに成長。
しかし地域を離れる人が増えたため小学校は休校になり、道場に通う児童もたった3人になりました。
そんな中、立ち上がったのが、道場の黄金期を支えていた世代でした。
そのひとり、成田秋奈さんは夫の転勤を機に久保内にUターン。
成田さんは、中学生の時に全国ベスト16まで進んだ実力者で、子どもたちと一緒に数十年ぶりに道場通いを再開したとのこと。
「久保内の剣道がまた熱いらしい」。
やがてそんなうわさが広がり、千歳などの遠方から通う人も現れるようになりました。
再び熱を帯びる久保内の剣道文化。
もう一度、黄金期が訪れる日も近いかもしれません。
1か月間の壮瞥町の生活で驚いたのは、ちぢみほうれん草のおいしさ。
道の駅に行けば農家が納品したそばから売れていき、農園に直接買いに来る人もいるほど。
雪が少なく適度に寒い壮瞥町は、ほうれん草のハウス栽培に向いているといいます。
ちぢみほうれん草を栽培する農家のひとり木村大作さんは、壮瞥町に移住して新規就農しました。
20代前半から自分の農場を持とうと土地を探しまわりましたが、資金も経験もなったため門前払いをされることが多かったそう。
けれど壮瞥町は違いました。
ちょうど1年間の農家の研修制度がはじまったこともあり、木村さんは歓迎されたといいます。
研修後も、農家の先輩の手厚いフォローが続き、家族ぐるみでサポートしてくれました。
いま木村さんのもとには「ここで働きたい」と申し出たひとりの若者がいるそう。
伊達市からやってきた大学生です。
木村さんのつくる野菜にあこがれて、来年の春からこの農園で働くことになりました。
「いつか自分もみんなから信頼される農家になりたい」と夢を語る大学生。
木村さんは自分を受け入れてくれた町で、今度は次世代を育てる役割を担っていきます。
そして年内最後となる今回の放送では、協力してくれた30組のローカルフレンズが選ぶ名場面も紹介。
まずは今年4月に訪ねた道南の奥尻島。
海辺に漂着したプラスチックゴミを拾い集め、トレイやキーホルダーに変える取り組みを紹介しました。
放送後、うちでもやってみたいという問い合わせが各地から来たそう。
さらに島の小学校や高校にも活動は広がり、フェリーなどでの販売も始まりました。
7月に訪ねた宗谷・中頓別町では、地域おこし協力隊の植村有貴さんが行っている活動を紹介。
地域のお年寄りたちへ地道な聞き取りを行って埋もれた歴史を掘り起こし1冊の本にまとめました。
貴重な地域の記録となるこの本。
放送後、ぜひ送ってほしいとの連絡が町内外から届いているそうです。
そして5月に訪れたオホーツクの津別町では、金物店を営む中川博子さんの「終活」物語に出会いました。
夫が他界し自身も80歳を超える中、夫の形見のネクタイをほどき、自身の終活として巾着袋を作り始めた中川さん。
放送後、30件近く「見たよ!」という連絡があったそう。
その声に元気をもらい、巾着袋の完成後も新たな手仕事を続けているそうです。
今年もローカルフレンズをご視聴いただき、ありがとうございました。
次の滞在記は3月の予定です。
来年もよろしくお願いいたします。