函館 大量魚打ち上げ1週間 漁港内の海中酸素濃度ほぼゼロ

函館市の海岸に大量の魚が打ち上げられてから14日で1週間です。回収作業が続けられる中、地元の水産試験場が現場近くの漁港内で海中の酸素濃度を詳しく調べたところ、ほぼゼロにまで低下していることが新たに分かりました。酸素濃度の低下が長引けば、海の生物に影響が出る可能性もあるため、水産試験場は今後も調査を続けていく方針です。
【14日までに160トン余を回収】
函館市浜町の海岸には今月7日、イワシなどの魚が大量に打ち上げられ、漂流している魚もあわせると推計であわせておよそ1100トンに上るとみられています。
市は、打ち上げられた魚の回収を急ぐ必要があるとして、12日からは重機を投入して作業を進めていて、14日までに160トン余りを回収したということです。
【現場近くの海中酸素濃度がほぼゼロに】
こうした中、函館水産試験場が大量のイワシなどが打ち上げられた現場に近い戸井漁港の5つの地点で海中の酸素濃度を調べたところ、すべての地点の濃度がほぼゼロの値にまで極端に低下していることが新たに分かりました。
海水1リットルあたり6ミリグラムの酸素が含まれるのが基準の濃度だということで、函館水産試験場は「一般的に魚が死んで腐敗し、海の中で分解される過程で酸素を消費するが、今回は死んだ魚の数が多かったため、海の中の酸素濃度が急激に低下したとみられる」としています。
市によりますと、今のところ水産物への被害の情報は寄せられていないということですが、水産試験場は、酸素濃度の低下した状態が長引けば海の生物に影響が出る可能性もあるとして、今後も調査を続けていく方針です。
【戸井漁港でも回収作業 漁業者からは不安の声】
大量の魚が打ち上げられた海岸からおよそ600メートルほど離れた函館市の戸井漁港にもイワシなどの多くの魚が流れ込んでいて、連日、漁業関係者たちが岸壁と船の上からに分かれて網で魚を回収する作業にあたっています。
地元で70年近くタコ漁などを行っている館山勝博さん(74)によりますと、今回、死んだイワシなどの多くの魚が漂流していることから海水が濁っているということで、今後の漁にも影響が及ぶのではないかと不安を募らせています。
館山さんは、「これだけ大量の魚が漂着したのは初めてです。これからはナマコ漁も始まるのでこのような状態が続くと困ってしまいます。解決方法はありませんが、早期の解決を願うばかりです」と話していました。
【江差町にもイワシが】
函館市の海岸に大量のイワシなどが打ち上げられているのが見つかったのと同じような現象が、日本海側の江差町でも確認されました。
イワシが打ち上げられたのは江差町柏町の江差追分漁港五勝手地区やその周辺の海岸で、13日、地元の住民が見つけたということです。
道や町によりますと、今回、打ち上げられたイワシはおよそ1トンに上るとみられています。
道と町は14日午後、職員などおよそ50人の体制で手作業による回収作業を行い、回収したイワシは町の焼却施設で処理したということです。
檜山振興局水産課の佐々木剛生課長は「函館のイワシとの関係性は正確にはわからないが、函館に漂着した大群の一部が江差にも流れ着いたのではないか」と話していました。