道内最大級農業法人「ノベルズ」官民ファンド支援で事業再生へ

十勝地方を中心に15の牧場を経営する道内最大級の農業法人、「ノベルズ」のグループが飼料価格の高騰などから経営が悪化し、官民ファンドからあわせて25億円の支援を受け、今後5年以内に事業再生を目指すことになりました。

「ノベルズ」は7日、オンラインで会見を開き、官民ファンドの「地域経済活性化支援機構」からグループに▽10億円の出資と15億円の融資のあわせて25億円の支援を受けるとともに、▽機構側から2人を取締役として受け入れ、事業再生に取り組むことを明らかにしました。
「ノベルズ」は2006年の設立以降、急速に事業規模を拡大し、現在は道内と山形県にある15の牧場で乳牛と肉牛合わせておよそ3万2000頭を飼育する道内最大級の農業法人です。
しかし輸入飼料の高騰や新型コロナウイルスの影響による肉牛の市場価格の低迷でここ数年は経営が悪化し、「地域経済活性化支援機構」に支援を求めていました。
グループの従業員およそ650人の雇用を維持するほか、酪農家の重要な収入源の1つとなっている肉牛向けの子牛の買い取りなどの事業も継続するということで、会社ではグループ全体の決算の仕組みも改善しながら5年以内に事業再生を目指すことにしています。
「ノベルズ」の延與雄一郎社長は「経営的に悪い部分を改善しつつよい部分を伸ばすことでグループの成長に全力をささげたい」と話しています。
【十勝の畜産関係者から先行きへの懸念の声】
道内最大級の農業法人、「ノベルズ」のグループが官民ファンドから支援を受けて事業再生に取り組むことになったことについて、十勝地方の畜産関係者からは業界全体の先行きを懸念する声が上がりました。
このうち清水町の50代の酪農家は、「ニュースを見て衝撃を受けた。乳価は徐々に上がっているが、飼料価格は高止まりが続いていて厳しい経営環境は変わっていない。あすは我が身だと思って経営している」と話していました。
また、帯広市の30代の酪農家は、「事業規模が大きいところや最近投資をしたばかりの酪農家は、どこも経営が厳しくなっているので、今後は廃業を選択するところも出てくるのではないか」と話していました。
【影響や支援の背景について解説】
取材にあたっている帯広放送局の米澤直樹記者が影響や支援の背景を解説します。
Q畜産業界への影響は?
Aノベルズは、出荷乳量と肉牛の飼育頭数は道内畜産業界では1位で、全国有数の『業界のトップランナー』。
今回の一件は、同じように経営が厳しい地域の畜産業界に暗い影を落としたことは間違いない。
Q支援の背景は?
Aノベルズのためというのももちろんだが、北海道の畜産業界全体への影響を考慮しての支援といってもいい。
官民ファンド側としては、インバウンド増加による需要の回復や、乳価の値上げ、さらに来年度は、生乳の生産抑制の緩和も予定され、資金繰りと経営改善のメドがつけば事業再生は可能だと判断したとみられ、思い描いたとおりの経営再建につなげられるか注目される。