室蘭ー青森間のフェリー航路開設 背景には2024年問題も

室蘭港と青森港を結ぶ新たなフェリー航路が開設され、2日夜、第1便が運航されました。新たな定期航路開設の背景には物流業界で懸念されているある問題があります。

2日午後8時前、室蘭港には、青森港に向かう第1便の出港を見送るため大勢の関係者が集まりました。
1年8か月ぶりとなる定期航路の開設で、地元の期待の大きさがうかがえました。
【航路開設の背景に「2024年問題」】
今回の定期航路開設の背景には、物流業界のいわゆる「2024年問題」があります。
物流業界では、来年4月からトラックドライバーへの時間外労働の規制が強化されることから、人手不足の深刻化や輸送量の減少が懸念されているのです。
そこでこのフェリーの運航会社では、これまで青森港と函館港の間を運航していた4隻のフェリーのうちの1隻を室蘭港を使う航路に移すことにしました。
こうすることで、青森からフェリーに乗る所要時間は3時間40分からおよそ7時間に増えますが、別のメリットが生まれるからです。
【休息時間が増えるメリットも】
1つは、▼室蘭と函館の間を陸上輸送した場合の労働時間を減らせること、もう1つが、▼フェリーの所要時間が伸びた分、ドライバーの休憩を増やせることです。
「津軽海峡フェリー」の村上玉樹社長は、「室蘭と青森の航路だと休憩が7時間取れるので、2024年問題の解決に資する1つの選択肢を提供できると思います。時間の価値がこれまで以上に大きくなってくる点に就航の狙いがあります」と説明しています。
【利用するドライバーからも歓迎の声】
ドライバーからは歓迎の声があがっています。
第1便に乗船した50代のトラック運転手は、「今までは札幌から函館まで行っていましたが、その手前でフェリーが利用できるので便利になります。便数をもっと増やしてほしいです」と話していました。
引っ越しの荷物を群馬県に運んでいた30代のトラック運転手は、「会社から感想を聞きたいと言われて乗りました。休息のことを考えると、2024年問題もあるので、本当にいいと思います」と話していました。
【地元の運送業者も歓迎】
室蘭市の運送業者からも歓迎の声があがっています。
このうち、地元の商工会議所の副会頭も務める室蘭海陸通運の成田俊彦社長は、「室蘭と八戸を結ぶ航路が撤退してから船の出入りが減ってきていて、街も停滞気味という状況だったので、地元の経済や港の活性化につながると思っています」と話しています。
これまで道内各地から本州へトラックで荷物を運ぶ際は、苫小牧港からフェリーを利用するケースが多かったのですが、農作物の出荷が多い時期など、繁忙期には、混み合っていて乗船できず、函館港まで移動することもあったということです。
苫小牧から1時間程度の距離にある室蘭港を利用できれば、休憩時間の確保に加え、燃料や高速道路などコスト削減にもつながるとしています。
成田社長は、「室蘭から函館まで行く3時間が減れば、全体の時間外労働もコンパクトにまとめられます。今、燃料が高くなっているので、函館まで行けば相当なコストアップにもなります。室蘭でフェリーに乗れるメリットは十分にあると思います」と話しています。
【撤退相次ぐ室蘭港のフェリー 地元市長も“地域活性化に期待”】
室蘭港では、1990年代には青森県の八戸港や茨城県の大洗港などを結ぶ5つの航路がありました。
しかし、札幌に近い苫小牧港が物流拠点として競争力を高める中、撤退が相次ぎ、15年前の2008年には、青森港との航路が廃止され、すべての定期フェリーがなくなりました。
その後、5年前の2018年に、岩手県の宮古港を結ぶフェリーが就航しましたが、利用が伸び悩み、2年足らずで八戸港との航路に変更され、さらに去年2月に休止されました。
このため、室蘭港にフェリーの定期航路ができるのは1年8か月ぶりとなり、地元では物流だけでなく、観光などでも多くの人が利用し、地域の活性化につながることが期待されています。
室蘭市の青山剛市長は、「フェリー航路の復活は本当にうれしいです。物が動くと、経済も動くので、この地域にもいろいろな好循環が生まれると期待しています」と話していました。