地価調査 Rapidus工場進出の千歳市 上昇顕著

ことしの地価調査が公表され、札幌市中心部で相次ぐ再開発などを背景に札幌やその近郊の自治体などで地価が上昇したことから、道内の平均は去年に比べてプラス2.3%と、3年連続で上昇しました。特に千歳市では先端半導体の国産化を目指すRapidusの工場建設を受けて、住宅地の上昇率で全国1位から3位の地点を独占するなど、地価の上昇が顕著になっています。

「都道府県地価調査」は毎年7月1日時点の土地の価格を調べるもので、道はことし対象となった1013地点の結果をまとめ、19日公表しました。
それによりますと、住宅地と商業地それに工業地をあわせた道内の全用途の平均は、去年に比べてプラス2.3%と、3年連続で上昇しました。
このうち道内の住宅地の平均はプラス2.2%と、3年連続で上昇しました。
住宅地で上昇率が最も高かったのは「千歳市栄町5丁目」の地点で、1平方メートルあたり9万8000円と、去年に比べて30.7%上昇し、全国の住宅地で最も高い上昇率となりました。
千歳市内の調査地点は住宅地の上昇率で全国1位から3位を独占したほか全国8位と10位にも入り、Rapidusの工場建設を受けて雇用や人口の増加を見込んだ地価の上昇が顕著になっています。
また、道内の商業地の平均はプラス2.2%と、2年連続で上昇しました。
商業地で上昇率が最も高かったのは「千歳市北栄2丁目」の地点で、1平方メートルあたり10万2000円と去年に比べて30.8%上昇しました。
千歳市内の調査地点は商業地の上昇率で全国2位から4位に入り、Rapidusの進出を受けて住宅地と同様に商業地でも地価が大幅に上昇しています。
さらに道内の工業地の平均はプラス6.8%と、5年連続で上昇しました。
このうち「千歳市泉沢」の地点はプラス29.4%と、1994年以来、29年ぶりに上昇に転じて道内で最も高い上昇率となり、Rapidusの進出に伴って関連企業の間で土地を求める動きが広がっていることがうかがえます。
一方、道内の住宅地で地価が最も高かったのは「札幌市中央区宮ヶ丘2丁目」の地点で、1平方メートルあたり36万7000円と、35年連続で道内1位となりました。
また、道内の商業地で地価が最も高かったのは「札幌市中央区北3条西2丁目」の地点で、1平方メートルあたり470万円と、39年連続で道内1位となりました。
札幌市中心部で相次ぐ再開発などを背景に札幌やその近郊の自治体などで地価の上昇が続いています。
ことしの都道府県地価調査では、道内179の市町村のうち、全用途の地価が▽上昇したのは32、▽横ばいは11といずれも去年に比べて増加し、▽下落したのは136と去年に比べて減少したものの、75%余りにあたる自治体で地価が下落しています。
さらに、下落率の全国上位10地点のうち道内の調査地点は▽住宅地では8地点、▽商業地では6地点、▽工業地では2地点が入り、道内で二極化が続いていることを改めて浮き彫りにする結果となりました。

【 Rapidus進出で千歳市では投資加速】
今月、起工式が行われたRapidusの半導体工場が建設される千歳市では、住宅需要の高まりを見込んだ土地や建物への投資が加速しています。
ことしの都道府県地価調査で、千歳市内の調査地点は住宅地の上昇率で全国1位から3位を独占し、地価の上昇が顕著になっています。
地元の不動産会社によりますと、千歳市にRapidusの工場が建設されることが決まったことし2月以降、道内外から土地や建物の購入に関する問い合わせが急増していて、成約件数は例年に比べて数倍に増加しているということです。
問い合わせの多くは、建設工事の関係者やRapidus、それに今後進出が予想される半導体関連企業の従業員などが利用する住宅や宿泊施設の需要の高まりを見込んだものだということです。
この不動産会社が取り扱った物件では、JR千歳駅から徒歩10分ほどのところにある千歳市清水町の5階建の中古マンションが数億円で売買され、来月からはウィークリーマンションとして稼働が始まる予定で、室内にはベッドや机などが設置されています。
また、繁華街にほど近い千歳市朝日町の1700平方メートル余りの土地はこのほど購入され、今後、5階建てのマンション3棟が建設される見通しです。
千歳市の不動産会社「平和恒産」の鈴木善一社長は、Rapidusの進出を受けた市内の不動産への投資について、「25年ほど不動産業をやっているが、今までにない取り引きと問い合わせの数で、土地の購入までのスピードも速くなっている」と話しています。
一方で、鈴木社長は「JR千歳駅周辺では、これまでは1坪20万円ぐらいだった土地が40万円ほどになり、中には100万円くらいで取り引きされる土地もあって、バブルをほうふつさせる上昇となっている。地価に加え、建築資材も値上がりしていて、新しい物件では賃料が上がることになるので、今後、市内に引っ越ししてくる人の中には物件を借りづらく感じる人も出てくるのではないか」と話していました。

【不動産鑑定士「千歳周辺の価格動向を注視】
北海道不動産鑑定士協会の齋藤武也副会長は「千歳市のようにRapidusの進出といった起爆剤になるものがあれば、土地の取り引きが非常に活気づくことが今回の調査で見て取れた。Rapidusの影響がまだはっきりとは見られていない千歳市周辺の自治体にも今後需要が広がっていくことはまず間違いないと考えられるため、周辺の価格動向を注視していきたい」と話しています。