【解説】Rapidus千歳進出 背景と課題は

Rapidusの千歳進出について、担当の千歳支局・海野記者が詳しく解説します。

◆Rapidusの工場建設をめぐり道内でも動きが出始めているが、そもそも先端半導体の国産化を目指すねらいは何か?
<海野記者>
このプロジェクトは、官民一体で進められているわけだが、それは、経済安全保障上、半導体製品を安定的に確保する重要性が高まっているから。
先端半導体は自動運転や、AI=人工知能、スマートシティーなど未来の社会に必要不可欠とされ、今後、需要はどんどん高まるとみられている。
日本政府としても海外に調達を依存する状況では、たとえば紛争などが起きて調達が困難になった場合に、日本経済に深刻なダメージが及びかねないという懸念がある。
そうした事情から、Rapidusでは、国の全面的な支援のもと、回路の幅が2ナノメートル以下の先端半導体の量産を目指している。
◆それだけ重要な工場がなぜ千歳市で建設されることになったのか?。
<海野記者>
まず、建設予定地を見ると新千歳空港のすぐ近くにあり、アクセスが良いことがわかる。
さらに千歳市は半導体の製造に不可欠な豊富な水に恵まれている。
また、電力について「Rapidus」は、環境への配慮から再生可能エネルギーの活用を促進したいとしている。
北海道では太陽光や風力など再生可能エネルギーのポテンシャルが高いものの、発電した電気を送る道内の送電網の容量が十分ではないなど、インフラ面での課題も残されている。
◆千歳市に建設する新工場では▽2025年に試作ラインを作り、▽2027年ごろの量産化を目指しているということだが、実現に向けて、何が課題になってくるか?
<海野記者>
専門家は、「日本の技術は世界と10年以上の差があり、2ナノの半導体を日本の技術者や会社だけで実現することは無理だ」と指摘している。
その上で、RapidusがアメリカのIT大手「IBM」やベルギーの研究機関の「imec」と連携していることを踏まえて、次のように指摘している。
(半導体業界に詳しいイギリスの調査会社「オムディア」の南川明シニアコンサルティングディレクター)
「人材不足というのが一番いまは課題ではないかなと思います。世界的な優秀な人材が協力してくれるということが一番。技術的に離れてしまったものをキャッチアップできるチームだと思います。最先端を知っている技術者がほとんどいないわけですから、
とにかく学べるものは貪欲に学んでいく、最初のフェーズは非常に重要ですよね」
◆人材の確保が課題で、なかなか一筋縄でいかないようだが・・・。
<海野記者>
地元で取材をしていると、Rapidusの進出には好意的な人が多い。ただ、本当に工場が建設できるのかとか、継続的に操業していくことは可能なのかといった、慎重な見方をしている人がいるのも事実。巨額の投資がなされるRapidusの進出によって、道内の産業構造や道民の暮らしはどう変わるのか。工場の建設が進むに従ってどのような変化が生じるのか。巨大なプロジェクトの行方を今後もつぶさに伝えていく。