ガの一種“クスサン”が大量発生 健康影響や対策は?

大きいものでは羽を広げた長さが15センチにもなる「クスサン」というガの一種が、ことしは道内の都市部でも大量に発生しています。健康への影響や対策について取材しました。

道立総合研究機構林業試験場によりますと、ガの「クスサン」は、ことし空知地方や上川地方などの森林が広がる地域に加え、例年はほとんど見られない札幌市の都市部でも大量発生が確認されているということです。
このうち、札幌市西区にある地下鉄「琴似駅」では、今月25日午後9時ごろ、たくさんのクスサンが街灯の周りを飛び回っていたほか、壁や地面にも張り付いていました。
近くを通った人たちは、クスサンに気づくと叫び声を上げながら走って通り抜けたり、もの珍しそうに写真を撮ったりしていました。
札幌市に観光に来た20代の女性は、「たくさんのガがいてびっくりしました。大きさも結構あるので、ちょっと気持ち悪いです」と話していました。
一方で、昆虫愛好家だという60代の男性は、「毎年、夏が終わると街なかでもよく見かける気がします。私にとっては秋の風物詩です」と話していました。
【道内で周期的に大量発生する“ガ”】
林業試験場によりますと、道内で周期的に大量発生するガにはいくつかの種類があります。
ことし大量発生した「クスサン」は、羽を広げた長さが大きい個体で15センチほどにもなる大型のガで、羽の色は黒みを帯びた黄色や赤色をしています。
一方、「マイマイガ」という別の種類のガは、大きい個体で10センチほどと「クスサン」よりも一回り小さく、羽の色はオスは焦げ茶色、メスは白色です。
「クスサン」は成虫、幼虫ともに毒は持っておらず、触ってもかぶれることはありませんが、「マイマイガ」は、幼虫の体毛に触るとかぶれることがあるということです。
道内では▼2006年から2012年にかけて「クスサン」が上川地方や空知地方で大量発生しました。
「クスサン」のピークはいったん過ぎましたが、▼2013年には「マイマイガ」が道内各地で大量発生。
札幌市では、住宅の庭に大量発生したガを住民がガスバーナーを使って駆除しようとして火事になりかけるトラブルも起きるなど、市民の悩みの種となっていました。
さらに「クスサン」は▼おととし(2021)三笠市や上富良野町などで、▼去年(2022)は旭川市や留萌市などで大量発生が確認されました。
【“なぜ大量発生?”専門家の話】
ことし「クスサン」が都市部でも大量発生しているのはなぜなのか、専門家に聞きました。
道立総合研究機構林業試験場の内田葉子研究職員は、詳しい理由は分かっていないとしながらも、▼温暖化によって生育に適した環境になり、▼個体数が増えて都市部に移動している可能性があるとしています。
今後の見通しとしてことしの大量発生については、成虫に羽化する時期が来月上旬までで、寿命は長くても10日ほどのため、来月中旬には終わる見込みだということです。
ただし、ことし大量発生した個体が産んだ卵は越冬して、よくとし成虫となるため、来年も大量発生のおそれはあるとしています。
対策としては卵の段階で駆除することが重要だということです。
卵は縦横2ミリほどの大きさの細長い球体で住宅の壁や樹木などに密集して産み付けられます。
全体に白っぽく、上の方の先端部分が黒いのが特徴です。
内田さんは「クスサンについて、見た目が気持ち悪いなどと不快に思う人もいるかもしれないが、人体への害はないので安心してほしい。ただ、大量発生が長く続くと樹木への食害の可能性が出てくるので、可能な範囲で駆除をお願いしたい」と話していました。