60頭余の牛襲ったヒグマOSO18を駆除 安どの声

北海道東部でこれまで60頭余りの牛を襲った、OSO18と呼ばれるヒグマが先月30日に駆除されたことを北海道が発表しました。

北海道によりますと、先月30日の午前5時ごろ、釧路町仙鳳趾村の放牧地で許可を受けたハンターがヒグマ1頭を駆除したということです。
当初はOSO18とは分からなかったということですが、DNA鑑定の結果、今月18日にOSO18と特定されたことを明らかにしました。
駆除されたヒグマは体長2メートル10センチ、名前の数字の由来ともなった前足の幅は20センチ、体重は推定330キロあったということです。
このヒグマは先月28日に初めてこの放牧地で目撃され、人を見ても逃げないため、ハンターが有害性を判断し、駆除したということです。
釧路町に隣接する標茶町と厚岸町では4年前からことし6月にかけて、放牧中の牛あわせて66頭が襲われ、このうち32頭が死ぬ被害が出ていて、いずれもOSO18による被害とみられています。
釧路総合振興局の杉山誠一部長は「多くの被害を出してきた個体だったため、安心して営農ができる環境を取り戻せてほっとしている。今後、OSO18のような個体が発生することがないよう、個体数調整や出没対策などを関係団体と協力して進めていきたい」と話していました。
【「OSO18」をめぐる経緯】
「OSO18」をめぐる経緯をまとめました。
「OSO18」は最初に牛が襲われた標茶町オソツベツという地名と、当初、足の幅が18センチあるとみられたことから名付けられました。
体長は2メートルから2.2メートルのオスです。
最初の被害が確認されたのは2019年7月でした。
標茶町オソツベツの牧場で体重400キロの牛が死んでいるのが見つかりました。
その後も被害は続き、ことしも6月に標茶町で1頭が襲われ、死にました。
この4年間に襲われた牛はあわせて66頭、このうち半数近い32頭が死んでいます。
現場に残された体毛の鑑定結果や足跡などからいずれも同一のクマ、OSO18による被害とみられています。
被害が相次ぐ中、牧場は放牧地を囲む電気柵を設置するなど、対策に追われました。
道は「特別対策班」を結成し、捕獲を試みてきました。
わなを複数の箇所に設置しましたが、警戒心が強くてかかりません。
人間がしかけたわなを学習する知能の高い個体だとみられています。
発砲が禁止されている夜間に牛を襲うことも捕獲を難しくしました。
監視カメラが姿をとらえたのはわずか数回です。
こうしたなか、ことし6月、標茶町中チャンベツ原野に設置した監視カメラにクマ1頭が写っているのが確認されました。
採取された体毛を鑑定した結果、過去に採取されたOSO18のDNAの型と一致。
これまではOSO18とみられるクマの画像などは公開されていましたが、OSO18と特定されたのは初めてでした。
人前に姿を見せないため「忍者」とも呼ばれたOSO18。
ついに駆除されました。
【被害にあった酪農家は「ほっとした」】
OSO18による被害を受けた地元の酪農家からは、駆除を受け安どの声が上がっています。
標茶町中チャンベツ原野で酪農を営む佐藤守さんは、4年前とおととし、放牧中の牛、合わせて5頭が襲われ、このうち3頭が死にました。
駆除の知らせを受け佐藤さんは、「今年に入り、今までとは違う襲い方や、行動を不気味に感じていた。友人から朝3時半ごろ『捕獲されたようだ』と連絡があり、ほっとした」と話していました。
佐藤さんは被害を受けたあと、クマが近づかないよう、夜間にラジオを大音量で流すなど対策を講じてきたということで、「また同じような行動を取るクマが出てきたら大変だ。このまま対策は続ける」と話していました。
【駆除したのは釧路町の職員】
道東の釧路町内でOSO18が駆除されたことを受けて、小松茂町長は「標茶町と厚岸町の被害が甚大で、今回もし捕獲されなければ、釧路町内の生産者の牛も襲われかねなかった。非常に良かったと思うし、一安心している」と述べました。
また、OSO18を駆除したのが、有害鳥獣駆除の許可を受けたハンターで、町の農林水産課の職員であることを明らかにしたうえで「よくぞやってくれたという思いだ。当初、本人はOSO18だと思っていなかったが、結果としてOSO18だと分かり驚いていた」と話していました。