【フレンズ滞在記】行き着いた岩内町で海外との懸け橋に

地域にディープな人脈を持つローカルフレンズのもとに、ディレクターが1か月滞在する「ローカルフレンズ滞在記」。今月の舞台は岩内町。町内でカフェを営むローカルフレンズの目黒沙弥さんのもとに、札幌局の門脇陸ディレクターが滞在します。

札幌から車で1時間40分。滞在初日、待ち合わせ場所を決めずに目黒さんのカフェへ突撃するとシャッターがおりています。店は閉まっているよう。居場所を聞くと「ニセコにいる」といいます。岩内町から車で50分ほど走らせ、ようやく会えました。目黒さんはディレクターが来る直前まで寝ていたそうです。「ちょっと時間があったから寝ちゃって」。朝からニセコを駆け回っていました。

そんな目黒さんは札幌市出身。バックパッカーとして世界を2周、日本を1周しました。数多くの地域を見た末、心ひかれたのが岩内町でした。移住の決め手は、町に暮らす人たちだったそう。「きれいなところってたくさんあるわけじゃないですか。だけど思い出すのは人。わたしにとって本物だなって思うのは岩内なんですよね」と語ります。この日も町のお祭りを練り歩くと、老舗の酒屋さんにホテルの経営者。会う人会う人、みな知り合いです。暮らしていく中で目黒さんは「世界とこの町を結びたい」と考えるようになったといいます。

そこで注目したのが、町のおすしのおいしさでした。ニシンやスケソウダラ漁で栄えた岩内町は、町の中心部だけで7店ものすし屋がひしめく、すし王国。食べに来た人も「(味が)全然ちがう」と大絶賛。この職人芸を見て、目黒さんは「海のないニセコに打って出よう!」と思いつきます。ニセコは言わずと知れた国際的なリゾート地。そこに岩内町のすし文化を持ち込もうと考えたのです。そうしてすし職人が出張するサービスを始めると、これが大成功。すし職人の一人は、先シーズンは20回近くニセコに行ったと語ります。

先月オープンした創作居酒屋は、岩内町の魅力を広く伝えようとするお店。腕を振るうのは、すし屋の3代目・杉山晃平さん、24歳です。札幌で学んだフランス料理の技を生かし、岩内町の素材を斬新な発想で調理し、提供しています。メニューはマグロのトリュフオイル漬けや5色ゴマのなめろうなど、珍しいラインナップ。お客さんも「ちょっと変わっているのがおいしかった」と話します。しかし杉山さんは「札幌で本当にがんばっている人たちを見てきたので」とまだまだ満足はしていない様子です。もくもくと料理をする姿からも、その熱意が伝わってきました。

「小手先の技術には負けない熱さがここにはあるんですよ」。目黒さんの言葉どおり、岩内町の熱さに驚いた滞在1週目でした。