新幹線の函館駅乗り入れ調査へ 実現の方法は?課題は?

函館市の補正予算案の中でも、とりわけ注目されているのが新幹線のJR函館駅への乗り入れについての調査です。大泉市長肝いりの政策は、今後どう進んでいくのでしょうか。

【調査費用3770万円余】
「調査を行ってさまざまな角度から検討していきたいと思います」。
大泉市長は新幹線乗り入れの調査費として補正予算案に3770万円余りを計上しました。
調査では、新幹線の整備費や技術的な課題を検討し、乗客数の見込みや将来の収支などを推計するとしています。
さらに、新幹線の札幌延伸に伴いJRから経営が分離される並行在来線の乗客への影響についても分析する方針です。
ことし9月には調査を始め、今年度中に結果を公表するとしています。

【どのような方法が?】
仮に函館駅への乗り入れを実現しようとすると、どのような方法が考えられるのでしょうか。
乗り入れの区間は、新函館北斗駅と函館駅の間で、函館市と七飯町、それに北斗市にまたがるおよそ18キロ。
現在は在来線で、いわゆるアクセス列車、「はこだてライナー」が走っています。新幹線から乗り換え、およそ20分で函館駅に到着します。
乗り入れの有力な案の1つが、今あるこの線路の隣にレールを1本増やす方法です。
在来線の線路の幅は1067ミリ。
しかし、新幹線の線路幅はより広い1435ミリです。
そこでレールを1本加えて幅を広げることで、新幹線を函館駅まで走らせるという考えです。
実現すれば、新函館北斗駅での乗り換えの必要がなくなり、函館と札幌、函館と東京がそれぞれ直結。函館から見ると利便性が高まります。

【課題は?】
一方で、乗り入れには大きな課題があります。1つは費用です。
線路や関連施設の建設費だけでなく、開通後の維持管理費も含めてどう捻出するのか。
函館市民のほかに、「はこだてライナー」が通る北斗市や七飯町の理解を得る必要があるほか、国や道、JRの協力も不可欠です。

【専門家 “まちづくり議論を”】
今回の政策について、鉄道と地域振興に詳しい青森大学社会学部の櫛引素夫教授は次のように指摘しています。
「一番大事なことは新幹線の乗り入れが目的じゃなくて手段だというところです。つくりたい未来、実現したい社会というのはなんなのかというところをまず徹底的に考えていかないといけない」。
そのうえで、調査を無駄にしないためにも、市民も巻き込んで真剣にまちづくりを議論することが重要だとしています。
「どういう地域をつくりたいのかということが議論の本質になります。人口構成がどんどん変わっていく中で、町全体で駅前というのがどういうエリアなのか、どういう機能なのか、どういう役割をもたせるべきエリアなのかをきちんと議論する。都市計画的な視点からの議論、検討が本当に大事です」(櫛引教授)

まちづくりに大きく関わる新幹線の乗り入れ。
大泉市長が描く未来とは。
「函館だけじゃなくて地域全体の起爆剤で道南全体を持続的に発展するために必要なものだなと考えています。道南全体を盛り上げるためにぜひ理解していただきたいと思いますし、何より市民の機運の醸成もそうですが、道南の首長さんたちともしっかり話をしていかなければならない」(大泉市長)