相次ぐバックカントリースキーでの遭難 増加の背景と備えは
平年よりも気温の高い日が続く道内では、バックカントリーと呼ばれる整備されていない雪山で雪崩に巻き込まれるなどの事故が相次いでいます。遭難が増える背景と備えについて詳しくお伝えします。
【相次ぐバックカントリースキーの事故】
この週末も、後志の「羊蹄山」でバックカントリースキーをしていた35歳の男性が雪崩が原因とみられる事故で死亡したほか、十勝の「ペケレベツ岳」でも1人が死亡しました。
警察によりますと、道内で冬山シーズンに入った去年11月以降、5日までに起きた山岳遭難の件数は、統計を取り始めた昭和38年以降、過去2番目に多い48件で、あわせて67人が遭難しました。
このうち死者・行方不明者はあわせて10人、けが人は16人にのぼっています。
また、48件のうち、バックカントリーでスキーやスノーボードをしていて遭難したケースは36件と、全体の7割以上を占めているということです。
バックカントリーでスキーやスノーボードをする場合は、山中で道に迷う可能性や立ち木に衝突したりするおそれもあるほか、気温が高い日には雪崩が発生する可能性が高まることから注意が必要です。
【増える“自力登山のバックカントリースキー”】
バックカントリースキーをめぐってはこれまで、スキー場からコース外に出て事故に遭うケースが相次いだことから各地のスキー場が規制を設けてきました。
このうちニセコのスキー場では、一部のゲートからだけバックカントリーに出られるようにした上で、自己責任で滑ることを認める「ニセコルール」と呼ばれる取り組みを行っています。
このルールの策定にも携わった、雪山に詳しいニセコ町在住の新谷暁生さんによりますと、近年では、外国人の旅行者を中心にスキー場のない山に自力で登って滑りを楽しむスキーヤーも増えているということです。
週末に雪崩事故が起きた「羊蹄山」や「ペケレベツ岳」も、ふもとや峠に車を止めてバックカントリーに入って行きやすい山として知られているということです。
一方で、羊蹄山ではバックカントリーでの事故がたびたび起きていて、ことし1月にも外国人の女性が雪崩に巻き込まれて亡くなったばかりでした。
専門家によりますと、こうした未整備の山では、日当たりのよい斜面で雪が緩みやすく、春が近づいてくるこの時期は特に注意が必要だということです。
【専門家「雪山は経験者含め3人以上で行動を」】
ことし相次いでいる雪山での雪崩のメカニズムについて、NPO法人「北海道雪崩研究会」理事の榊原健一さんは「この時期は寒暖差によって雪の中に崩れやすい層が出来てしまい、何かの拍子に表面の雪が滑り落ちる『表層雪崩』が起きやすい」と指摘しています。
その上で、榊原さんは「経験者でも積雪の状況を把握することは難しい。雪山に登るのであれば、経験者も含めて3人以上で行動し、全員が位置情報を電波で知らせるビーコンなどの装備を携行すべきだ」と話しています。