直木賞に北海道出身・千早茜さんの「しろがねの葉」

第168回、芥川賞と直木賞の選考会が19日、東京で開かれ、直木賞に、道内出身の千早茜さんの「しろがねの葉」が選ばれました。
千早さんは記者会見で、「呆然としています。今みている景色が脳内で処理できていない感じがします」と述べました。

千早さんは、江別市生まれの43歳。
大学卒業後、2008年に「魚神」で小説すばる新人賞を受賞し、デビューしました。
その後、2013年に発表した「あとかた」と、よくとしに発表した「男ともだち」は、2年連続で直木賞の候補に選ばれていて、今回、3回目の候補で受賞となりました。
受賞作となった「しろがねの葉」は、戦国時代末期の石見銀山を舞台とする歴史小説です。
当時の鉱山労働者が短命だったことを表す「石見の女は3人夫をめとった」という伝承をもとに、銀の鉱脈を探す山師の男に拾われた少女・ウメが、時代の変化にあらがいながら強く生き抜いていく姿を描いています。
千早さんは記者会見で、「今回は初めて歴史小説を書きました。現代小説を書いているときも市井の人たちの苦しみや悲しみなどの感情を書きたいと思っていたので、それは時代劇でも変わりません。これからも個人の人生や個人のみている世界に寄り添えるような作品を書いていきたい」と述べました。
千早さんは、直木賞に、小川哲さんの「地図と拳」と同時に選ばれ、来月下旬に都内で賞の贈呈式が行われるということです。

【2作が満場一致で支持】
直木賞の選考過程について、選考委員の宮部みゆきさんは小川哲さんの「地図と拳」と、千早茜さんの「しろがねの葉」の2つの作品が選ばれた過程について「選考は白熱したというか、盛り上がって長くなった。『地図と拳』は最初の投票から大変高い得点で僅差で『しろがねの葉』が続いていた。そのまま2つの作品について討議をして、2回目の投票をしたら2つともほぼ満票だった」と説明しました。
そのうえで、千早さんの作品については「デビュー作の時から千早さんが持っていた豊かな幻想性と、血のにおいや土のにおいがしてくるような筆力を存分に発揮していて、千早さんでなければ書けない。登場人物の多さに対し、ページ数は少なく、必要なことを煮詰めて余計なことを書いていない。すごくおいしいし、酔っ払うが、どんな材料を使っているのかわからないジャムのような作品だ。豊富な言葉の表現で方言にも間違いがない。見事に腰の据わった文章から積み上げた努力が見えるが、それを読者に心配させないほどこなれている」と評価しました。
最後に宮部さんは「2人とも若いので次はなんだろうという楽しみがある。満場一致で支持が集まった」と今後の活躍に期待を寄せました。