西興部村の特養 入所者全員の裸など撮影 村が虐待行為と認定

オホーツク海側の西興部村にある特別養護老人ホームで、職員がけがの有無を確認するためとして入所者80人全員の裸や下着姿の写真を撮影し、調査を行った村が虐待行為と認定していたことがわかりました。

入所者への虐待が明らかになったのは、西興部村にある特別養護老人ホーム「にしおこっぺ興楽園」です。
村と運営する社会福祉法人「にしおこっぺ福祉会」によりますと、去年3月19日から3日間にわたって職員がけがの有無を確認するためとして、入所者全員の60代から90代の男女80人の裸や下着姿の写真を160枚以上撮影したということです。
この施設では入所者が骨折する事案があったため、施設長など幹部職員6人が入所者全員を撮影することを決め、ほぼすべての職員にあたるおよそ30人が関わって拒否する入所者も撮影したということです。
撮影が終わった翌日の去年3月22日に入所者の関係者から村に情報提供があり、村と道が聞き取り調査を行った結果、ことし5月、「本来必要のない写真撮影を行い、入所者の尊厳を著しく損なった」として、虐待行為に認定しました。
運営する社会福祉法人では先週、別の障害者支援施設でことし5月から6月にかけて職員が入所者に対し、裸で長時間放置するなどの虐待を繰り返していたことが明らかになっていました。
「にしおこっぺ興楽園」の松岡晃司施設長は「入所者に対して配慮すべきだった。大変申し訳ない。利用者に安心、安全に過ごしてもらえるよう、研修を通じて対策を徹底したい」と話しています。

【HPには「人を尊ぶ」】
虐待が明らかになった特別養護老人ホーム「にしおこっぺ興楽園」は1988年に設立され、現在、およそ80人が入所しています。
施設のホームページには基本理念として、「私たちは『お年寄りは障害にかかわらず、人として尊ばれる』この人間としての権利を根底に捉えた介護を具体的に実現します」と掲げています。
そして、具体的な介護方針については、「利用者一人ひとりが自分らしく自立した暮らしができるように、人間性を尊重し、尊厳ある人生を支援します」と記しています。

【施設長が経緯明かす】
「にしおこっぺ興楽園」の松岡晃司施設長が取材に応じ、入所者全員の裸や下着姿を撮影したいきさつや今後の対応について話しました。
この中で当時のいきさつについては、骨折した入所者をふだんの確認作業で見落としたことから、幹部職員が会議で撮影を決めたものの、その際に入所者に配慮した撮影方法などを検討しなかったことが問題だったという認識を示しました。
また、当時の状況について、松岡施設長は「職員の中には『これはダメではないか』という人もいたが、それが上に伝わらなかった。全身ではなく、手や足などを部分的に撮る方法もあったので、配慮が足りなかったと思う」と述べ、意見を言いにくい職場環境だったことも一因に挙げました。
その上で、職員が入所者に八つ当たりや嫌がらせをする意図はなかったと説明し、虐待行為が指摘された去年3月から4月にかけて利用者や家族に謝罪したほか、職場内の研修を進めて再発防止に努めていると述べました。
松岡施設長は「今回の虐待で意識改革を進めている。今後は法人として管理指導をしっかりして、こういうことがないようにしたい」と話しました。

【村長は】
村内の施設で虐待行為が相次いだことについて、西興部村の菊池博村長が取材に応じ、「誠に遺憾で大変残念に思っている。利用者および家族の皆さんには、私からも深くおわびしたい」と述べました。
その上で今後の再発防止に向けて、「運営する社会福祉法人が中心になって利用者が安心安全に生活ができるよう、私から強く要望したい。村も協力しながら一緒になって今回のことについて対処していかなければならないと思っている」と述べました。

【村民は】
西興部村の特別養護老人ホームで虐待行為が行われていたことについて、施設の近くに住む70代の男性は「悪い評判を聞いたことがなかったので、ニュースを見てびっくりした。入所者を裸にして撮影するというようなことはあってはならない」と話していました。
一方で、施設は村内で数少ない特別養護老人ホームで村に必要なものだとして、「しかるべき指導を受けて、直すべきところは改善してほしい」と話していました。