放牧牛65頭襲ったヒグマの捕獲へ 標茶町で対策会議

道東の標茶町などで放牧中の牛を相次いで襲うヒグマ、通称「OSO18」の捕獲に向けた対策会議が開かれました。今後は積雪期を迎えるため、雪に残された足跡を追跡して居場所を特定し、冬眠前か冬眠明けの捕獲を目指す方針を確認しました。

道東の標茶町と厚岸町では2019年からことしにかけて放牧中の牛あわせて65頭が襲われ、いずれも同一のオスのクマ、通称「OSO18」による被害とみられています。
15日は捕獲に向けた対策会議が標茶町で開かれ、道や自治体の担当者、それに専門家などおよそ30人が出席しました。
この中で、ことしは採取されたクマの体毛を調べてOSO18の行動エリアを絞り込み、7か所に箱わなを設置したり、デントコーン畑で捕獲を試みたりしたものの、捕獲に至らなかったことが報告されました。
また、NPOでつくる「特別対策班」はこれまで見つかった痕跡をもとに、OSO18の体長はおよそ2メートル、推定体重は230から320キロ、前足の幅は16から17センチ程度で、一般的なオスの成獣とあまり変わらないという分析結果を明らかにしました。
その上で、OSO18の特徴として、▼完全に牛ばかりを狙って行動していることや、▼獲物への執着心があり、襲った現場に再び戻る習性があること、▼人間の気配には非常に敏感であることなどを説明しました。
対策会議では、今後、雪が降ってから冬眠するまでのおよそ10日間が足跡を追跡できる年内最後の機会だとして重点地域を4か所に絞り、目撃情報を集めるとともに、雪に残された足跡から居場所を特定し、冬眠前か冬眠明けの捕獲を目指す方針を確認しました。
特別対策班のメンバーで、NPO法人南知床・ヒグマ情報センターの藤本靖理事長は「OSO18の分からなかったところが徐々に分かってきたので、かなり追い詰めていると思う。道路を横断しているクマや足跡などを見たら役場に連絡してほしい」と話していました。

【「OSO18」とは】
「OSO18」は、最初に牛が襲われた標茶町オソツベツという地名と、足の幅がおよそ18センチあることから名付けられました。
大型のオスで、体長は2メートルほど、体重は230から320キロと推定されています。
最初の被害が確認されたのは2019年7月。
標茶町オソツベツの牧場で体重400キロの牛が死んでいるのが見つかりました。
その後も被害は続き、ことしも8頭が襲われました。
この3年間に襲われた牛は合わせて65頭。
このうち半数近い31頭が死んでいます。
現場に残された体毛の鑑定結果や足跡などからいずれも「OSO18」による被害とみられ、牛の被害額は標茶町と厚岸町で少なくともおよそ2300万円に上るということです。
この事態に酪農家は頭を悩ませています。
去年、被害を受けた厚岸町の牧場では1000万円をかけて放牧地を囲む電気柵を設置しました。
また、道は「特別対策班」を結成し、捕獲を試みてきました。
わなを複数の箇所に設置しましたが、警戒心が強くてかかりません。
人間がしかけたわなを学習する知能の高い個体だとみられています。
発砲が禁止されている夜間に牛を襲うことも捕獲を難しくしました。
人前に姿を見せないため「忍者」とも呼ばれるOSO18。
姿を消したまままもなく冬眠の季節を迎えます。