新型コロナ全数把握簡略化 保健所は 医療機関は

政府は、26日から新型コロナウイルスの患者の全数把握を簡略化しました。これを受けて保健所や医療機関の対応はこれまでとどう変わったのでしょうか。

【保健所では】
保健所はこれまで新型コロナに感染したすべての患者の個人情報を「発生届」で把握していました。
この「発生届」は、医療機関がそれぞれの患者ごとに氏名や住所、症状などの個人情報を入力して保健所に報告していたものですが、今回の簡略化で報告が重症化のリスクなどがある患者に限定されました。
この結果、札幌市保健所の場合、ことし7月と8月の感染状況をもとにすると、感染者の8割以上が「発生届」による報告の対象から外れるということです。
これを受けて、対象から外れた患者は自分で自分の容態を把握して、必要に応じてかかりつけ医に相談したり、陽性者サポートセンターに相談したりする必要があります。
札幌市保健所医療対策室の長野彩子業務調整担当課長は「保健所が全ての個人情報や健康状態を把握していた時代から、少しずつだが市民の皆さんが必要なときに必要な相談をしていただく段階に移ってきている」と話しています。
このため札幌市保健所は、患者の体調管理をサポートしようと、「こびまるライト」というインターネットサイトを提供しています。
このサイトに自分の体調を入力すると、コンピューターのプログラムが症状の深刻さを赤、黄色、緑の3段階で自動で判定して、陽性者サポートセンターに連絡することなどをすすめてくれます。
さらに、患者が体調が悪化したときや生活支援物資がほしいときのため、保健所は新たなリーフレットを作成しました。
リーフレットは、医療機関で新型コロナの検査を受けた患者に手渡され、陽性になった場合、名前や発症日、それに検査結果などを記入すれば、保健所に報告する際に活用できます。
このリーフレットと医療機関からの診療明細書を、リーフレットに書かれた指示などに従って保健所に送付すれば、生活支援物資の提供を受けることができます。
札幌市保健所医療対策室の長野彩子業務調整担当課長は「保健所では体調悪化のときにしっかりとサポートできるよう体制をつくりたい」と話しています。

【医療機関では】
これまで医療機関では、すべての感染者を対象に基礎疾患の有無や症状など詳しい情報を記載した「発生届」を作成していました。
このうち函館市の深瀬医院では、8月の多い時期には一日の陽性者が170人を超えたことがあり、看護師たちが1人あたり5分ほどの時間をかけて「発生届」の情報を入力していました。
陽性者の数は今月に入って減少傾向にはあるということですが、今回の見直しで入力する対象者は陽性者のうち1割から2割に減るということです。
看護師は「いつも業務が終わった後に入力していたので、これが減るだけで負担が減り、現場ではかなり助かると思います」と話していました。
深瀬医院の深瀬晃一院長は「どんな疾病でも重症化するリスクはある。その頻度が問題で、どこかで線引きをしないと手厚くするべき所に対応できない可能性がある。オミクロン株は感染力は強いが、特に若い人は重症化しにくいので、ウィズコロナの考え方では合理的な見直しだと思う」と話しています。
札幌市中央区の「円山ため小児科」では、ことし7月から先月にかけて患者が増え、連日10人ほど新型コロナウイルスの検査を行っていました。
小児科ではほとんどの患者が詳しい報告の対象外となるため、この病院では業務の負担軽減につながるとしています。
ただ、新たな懸念もあります。
これまでのように保健所による健康観察ができなくなるため、療養中に容体が悪化した場合は患者みずからが検査を受けた医療機関や「陽性者サポートセンター」などに相談する必要があります。
容体の急変への対応が遅れかねないとして、病院では、札幌市が作成したリーフレットを使うなど、療養時の注意点についてこれまで以上に丁寧に説明していく必要があるとしています。
具体的には、▽何回も吐いたり、意識が混濁したりするなどの重症化のサインを見逃さないことや、▽症状が悪化した場合にすぐに相談できるよう緊急連絡先を手元に準備しておくことが重要だとしています。
病院の多米淳院長は「詳細な届け出の対象外の人も少数ではあるが重症化する例や死亡する例が報告されている。『こういう場合はこうしましょう』といった具体的なアナウンスが重要になるので、気を新たにしてより丁寧に説明していかないといけない」と話していました。