【滞在記・浦幌町】好きなことをあきらめない

ディープな人脈を持つ「ローカルフレンズ」ととも地域の宝を探す「ローカルフレンズ滞在記」。9月の舞台は十勝の浦幌町です。
ローカルフレンズを務めるのは、浦幌町出身の井上陽さん(18)と移住4年目の古賀詠風さん(26)さん。
札幌局の住田カメラマンが2人とともに若者をひきつける浦幌町の魅力を探します。

現在浦幌町には高校がなく、多くの若者が中学卒業と共に町を離れます。
今週の主人公もそんな浦幌の若者の一人。ローカルフレンズの井上さんです。
高校進学のため浦幌を離れましたが、高校を卒業した今春、地元浦幌へUターン。
なぜ戻ってきたのか。どんな仕事をしているのか。その生活に密着しました。

滞在13日目。井上さんがコーチを務めるサッカー少年団の試合へ同行。
井上さんがUターンした最大の理由。それは小学生の時から打ち込んできたサッカーに関わり続けることでした。
週15時間ほどコーチをしています。
しかしコーチはボランティア。お金を受け取っていません。
一体どうやって収入を得ているのでしょう?
午後6時。井上さんは創業95年の老舗そば屋にいました。
店主は近江幹太さん(21)。高齢になった元店主から、去年、事業承継しました。
「同じ世代と一緒に浦幌で新しいことをしたい」と考えていた近江さん。
サッカー部の後輩になる井上さんがUターンすると聞くと、すぐに声をかけたといいます。
取材中、そば屋に来たお客さんは全員が知り合い。
町のあたたかな人間関係も、井上さんの大きな支えとなっています。
井上さんはそば屋の他にも、牧場で週18時間、コンビニで週8時間働いています。月収は合計18万円。
いま家賃4万円を払って一人暮らしをしていますが、十分に生活でき、サッカーのコーチをする時間も確保できています。
そんな複数の仕事を掛け持つ「マルチワーカー」という働き方を提案したのは父親の亨さんでした。
「やりたいことをやればいい」「仕事が山ほどある浦幌なら定職に就かずとも生活できる」と背中を押してくれたのです。

滞在16日目。
井上さんが町で一番好きな場所、太平洋が一望できる「昆布刈石海岸」へ。
「普段やってなかったこと、興味がなかったことを浦幌だったらたくさんできる。そう考えるとワクワクした」とUターンした理由を教えてくれました。
井上さんがUターンを決意したのには、もうひとつ理由がありました。
それは「浦幌部」という町の取り組みです。
町内に高校がないため、中学卒業後、多くの若者が町を出て行く浦幌町。
若者たちとのつながりが途絶えないようにと、「浦幌部」ではオンラインの集まりや地元の祭りへの参加といった地域活動を行っており、井上さんも参加者の一人でした。
移住者をひきつけるだけでなく、地元出身者も戻りたくなる浦幌町。
その背景には温かな人と人とのつながりと、それを支える町の取り組みがありました。