観光船沈没事故2か月 12人行方不明 発見と安全への願い

知床半島沖で観光船が沈没した事故から23日で2か月となります。事故では14人の乗客が亡くなり、今も12人の行方が分かっていません。現地では1日も早い行方不明者の発見と安全を願う声が続いています。

【警察の集中捜索終了】
警察は今月21日から集中的な捜索を行っていて、事故の発生から2か月となる23日も40人体制で現場周辺の海域や海岸で行方不明者の手がかりを捜しました。
このうち根室半島の沿岸では午前9時半に警察官およそ20人が集まり、捜索に先だって観光船が沈没した知床の方角に黙とうをささげました。
その後、警察官たちはボートに乗り込んで沿岸付近の捜索に向かったほか、陸上では波消しブロックの隙間をのぞき込みながら漂着物などがないか丹念に探しました。
警察によりますと、3日間にわたる集中捜索は23日夕方までに終了し、新たな手がかりは見つからなかったということで、今後は通常業務の中で捜索を継続するということです。

【国後島で遺体発見の男性が心境】
国後島で自然保護区の職員をしているドミトリー・ソコフさん(54)はこれまでビザなし交流に4回参加した親日家で、4年前には訪問団の団長として知床半島の羅臼町に滞在し、地元の祭りなどに参加した経験もあります。
ソコフさんは先月6日、国後島の西岸でフクロウの巣の調査をしていた際に、女性の遺体を見つけたということです。
また、先月18日には島の西岸で釣りの最中に男性の遺体を見つけたほか、付近で乗船者の所持品と見られる免許証やクレジットカードなども回収したということです。
23日、NHKの取材に応じたソコフさんは「国後島と北海道は距離も非常に近く、私たちは最も近い隣人だと考えています。事故の遺族にはたいへん同情しています」と心境を語りました。
遺体で見つかった男女2人については乗船者の可能性もあることから現在、ロシア側でDNA鑑定が進められていて、ソコフさんは「鑑定が迅速に終わるよう努力されていると思いますが、実際にはとても長い手順になります。私たちもできるだけ早く鑑定結果が出ることを期待しています」と話していました。

【献花やまず】
斜里町役場にある観光船沈没事故の献花台には、事故から2か月の23日も訪れる人がいました。
斜里町役場に設置された献花台には、今も1日あたり10束ほどの献花が寄せられています。
「早くすべての人が見つかることを願います」とか「ご冥福をお祈り申し上げます」といったメッセージと一緒に花や食べ物、飲み物などが供えられています。
中には、被害者の関係者とみられる人から「知床から帰ったらキャベツ食べるからって言ったじゃん!!帰るの遅いから約束のキャベツもってきたよ!」と書かれたメッセージとともにキャベツが供えられていました。
町によりますと、22日までにおよそ1250束の献花が寄せられたということで、町では1日に2回、職員が、供えられた花を整えたり枯れてしまった花を片付けたりして管理を行っています。
札幌から訪れた70代の男性は「ずっとニュースで気になっていたので来ました。事故は残念ですし、行方不明者が早く見つかることを願います」と話しました。

【釣り船「地道に安全心がけ」】
知床半島で観光船が沈没したあと行方不明者の捜索にも参加した斜里町ウトロの釣り船の船長の瀬川康彦さん(64)は、事故から2か月がたった今も12人の行方がわからないことについて、「釣り客に『何か見えたら声をかけて』と言っている。全員が見つかってほしいがもどかしい思いでいっぱいです」と話していました。
また、ウトロの小型観光船事業者でつくる協議会が、自主ルールで地元の釣り船や漁船と情報を共有し、複数社で出航判断をするとした点については、「釣り船の方が観光船よりも早い時間帯に海に出るので、霧や波の状況をいくらでも伝えることができる」と話し、協力を惜しまない考えを示しました。
瀬川さんの釣り船では、事故後、予約の7割から8割ほどがキャンセルされたということで、「事故で『知床は怖い』というイメージがついたと思う。それを1、2年でぬぐい去るのは難しいが、地道に安全運航を心がけて釣り客に示していくしかない」と話していました。

【寄付で基金条例】
知床半島沖で観光船が沈没した事故を受け地元の斜里町は、事故後、寄付が相次いだふるさと納税を財源に行方不明者の捜索などに活用する基金の条例案を町議会に提案し、可決されました。
ことし4月に観光船の沈没事故が起きた後、斜里町には全国各地から「事故対応の費用として寄付をしたい」といった問い合わせが相次ぎ、町はふるさと納税を通じて寄付を受け付けていました。
町では集まった寄付を財源に、行方不明者の捜索活動や事故の再発防止に向けた安全対策、慰霊事業などにあてるため新たに基金を設置することを決め、その条例案と予算950万円を23日の町議会に提案し、可決されました。
斜里町では「全国から多くの人に支援してもらったので、期待や意図を裏切らないよう活用したい」としています。

【再開した観光船】
斜里町ウトロで小型観光船を運航する事業者でつくる「知床小型観光船協議会」は、ことし4月の観光船の沈没事故を受けて運航を自粛していましたが、運航判断を複数の事業者で協議し原則、単独運航をしないといった自主ルールをまとめ、1週間前から今シーズンの運航を再開しています。
23日午前中には2隻の観光船があわせて30人余りを乗せて出港しましたが、船長どうしが業務無線で協議した結果、目的地のルシャ湾周辺の風が強くなると判断してその3キロほど手前で引き返し、港に戻ったということです。
京都市から訪れた女性は「事故が起きて悩みましたが、思い切って乗船しました。船からヒグマの親子を見られてとてもよかったです。目的地の手前で引き返した時には丁寧に説明してもらいました。安全対策を最優先にして今後も運航を続けてもらいたい」と話していました。
また、福井市から訪れた70代の男性は「クマを数頭見られましたが船から少し遠かったです。事故を受けて船長が岸に近づかないよう用心したのだと思います。安全を重視するスタッフの気持ちが伝わってきました」と話していました。
このほか群馬県伊勢崎市の60代の女性は「船長が『ここで揺れますよ』とか『止まりますよ』などと言ってくれたので、安心して乗ることが出来ました。みんなで協力して安全運航をしてもらいたい」と話していました。
知床小型観光船協議会は「自主ルールを徹底し安全運航に努めていく」としています。